接種率激減で明らかになった日本脳炎「ワクチン」の有害無益

9月27日,東京新聞(その後,奈良新聞など各紙)に「日本脳炎 室内犬1割から抗体 住宅地でも感染の危険」の見出しが躍った。記事の主な内容は,
1)2005年からの事実上の接種中断で,子どもたちの免疫が低下している,
2)室内犬に抗体があることは身近にウィルスがいる証拠で,
3)専門家が影響を心配しており,
4)旧型ワクチン接種が望ましいが在庫は少ない,
というものだ。現行(旧型)の日本脳炎ワクチンが積極的勧奨差し控え,第3期定期接種廃止となってから2年目の夏が過ぎた。専門家筋からは日本脳炎再流行 を予測する発言が繰り返され,ワクチン接種を再び勧める声が高まっており,記事はその代弁といえる。接種を差し控えてきたこの貴重な期間に,日本脳炎に対 するワクチン対策が有害無益であったという更なるエビデンスが積み重ねられてきており,この記事の論調に沿って逆検証してみたい。

1) 抗体価低下の意味
国立感染症研究所によると,図1のように2006年の0-4歳の抗体保有率低下は今までにないもので,日本脳炎に罹る危険性が高くなっていると不安を強調する。単純にそう言えるのだろうか。

図1 抗体保有率の年次推移

同じ感染研のこれまでのデータでは図2のように,以前よりワクチン非接種集団の抗体保有率は10歳以下では20%という同程度の低さを示していた。つま り図1は接種を控えたために集団全体として非接種者のこの数字に近づいただけであることを示している。非接種集団でも日本脳炎の発生はないので,抗体保有 率低下が日本脳炎に対する抵抗力の低下を意味するものではない。逆に後述の如く,接種による人為的で有害な免疫反応の減少を示しているなら,むしろ好まし いことといえる。

図2 接種・非接種の抗体保有率

2) 子どもは室内犬以上に自然感染している
また図2では非接種群の子どもでも,抗体保有率は10歳を超えると80%に達している。ほとんどの子どもが以前よりウィルスの自然感染を受けているわけ で,その比は室内犬1割の及ぶところではない。問題は,この自然感染でどのくらい発病しているか,であるが,20歳未満でワクチン未接種の累計数百万人の 若年集団から,この10年間に日本脳炎はほとんど発生していない。つまり,感染しても発病しない不顕性感染で,自然に日本脳炎に対する抵抗力を獲得してい るのである。

3) 事実上の接種中断でも患者は増えない
これまでの日本脳炎ワクチン年間接種数400万人が数10万人に減少という事実上のワクチン中止後,人口1億2千万人に対し2005年は5名,2006 年には8名の日本脳炎患者が発生した。しかし,ほとんどが高齢者であり,接種対象年齢でワクチンを中止したことによる発生はみられてない。熊本で3歳の患 児発生があったが,図3のように近年約10年間の20歳未満における自然発生頻度内のものである。数10人規模で子どもに日本脳炎が増加すると警告する専 門家もいるが,そのような傾向は見られない。むしろ接種の激減にも関わらず発生頻度に変わりがない現実は,日本脳炎に対するこれまでのワクチンは必要がな かったことを示している。

図3 年齢分布の年次推移

4) 在庫ワクチンは自然感染より危険
接種後の副反応による被害実態は集計に時間がかかるため,2004年度が最新である。

図4 20歳未満での発症と害反応の比較

ワクチン接種対象である20歳未満の若年集団(図4)において,1994年からの11年間で日本脳炎患者の自然発症は4例に過ぎない。一方,接種による 有害な免疫反応などの副反応による死亡は2例,即時型全身反応252例,脳炎・脳症32例,けいれん(髄膜炎と思われる)45例,入院143例などがみら れ,リスク利得勘定では比較にならない,いかに危険なワクチン(これでワクチンと言えるのか?)であるかがよくわかる。
接種による神経系の副反応は,図5のように接種年齢毎に確実に発生している。神経系の副反応は重篤かつ難治であり,生涯にわたり寝たきりや障害として残ることが多い。

図5 神経系障害と接種年齢

初回接種の3,4歳は,廃止となった3期よりも接種率が高い分だけ被害も多い。従って,3期に限らずどの年齢においても接種を勧めることはできない。

新ワクチン開発の遅れで実質上の中止処置が長引くことにより,これら副反応の被害件数が大幅にかつ確実に減少することが予測され,子ども達に(当然,親 にとっても)大きな利益となるであろう。非加熱製剤の在庫処理で被害を拡大させた薬害エイズ事件の例を反省の糧とし,ワクチンメーカーの在庫一掃キャン ペーンに惑わされることなく,安全性を再優先にして慎重に推移を見守るべきである。

(2007年10月)