日本小児科学会・小児医療体制の改革ビジョン

「日本小児科学会・小児医療体制の改革ビジョン」−「地域小児センタ−の学会認定制度の創設」は,小児科学会理事会路線の現状の行き詰まり,国の公立病院合理化・再編案への一層の“のめり込み”を表しています。

最近,日本小児科学会理事会は,「地域小児センタ−の学会認定制度の創設」を進めています。これは,現在,日常診療を頑張っている中小の病院の小児科医 療を潰していくことに繋がるもので,多くの現場の小児科医は賛成できないものです。実際に大阪小児科学会の二度に亘る議論でも,現場から多くの臨床医の批 判の声が上がっていることからも明らかです。

この時期に,この「地域小児センタ−の学会認定制度の創設」が出てくるのには以下の2つの背景があると考えられます。
第一には,“「地域小児科センタ−」的な病院小児科を,日本小児科学会が認定していく動きを新に開始する”という内容は,実は従来の「地域小児科センタ −」の選定が思うように進んでいないことへの小児科学会の新たな対応であり,従来路線がうまくいっていないことの表現であると言えます。これに対しては学 会内部からも“「従来の改革ビジョンでのセンタ−構想」を宙ぶらりんにして,次の案が出てきても,「今までの総括が無い」” との批判意見が出てきています。
第二には,現在,政府が進める「公立病院改革」−公立病院の合理化・再編策に飲み込まれてきていることが一層明らかになってきています。政府案では,総 務省が2008年(平成19年)内に各自治体に対しガイドラインを示し,経営指標に関する数値目標を設定した改革プランを策定するよう促すとされ,

1)経営効率化,
2)再編・ネットワ−ク化,
3)経営形態の見直し,

の3視点を重点にしています。また,病床利用率が過去3年間連続で70%未満の病院に対しては,病床数の削減や診療所化を求めることなどを通して,自治体 病院の統合・再編を強力に進めるものです。10月には野村證券等の民間資本が三重県の4県立病院の経営改善コンサルテイング契約を受託し,民間資本の導入 による再編策が都道府県段階で生じています。

“小児医療体制の改革ビジョン”政策は,まさに,政府が進める「公立病院改革」のうちの,「再編・ネットワ−ク化」を小児科医療の分野から,小児科学会 が先行して進めていくものになりかねません。現在の “医療崩壊”と言われるほどのわが国の医療の荒廃の責任は,永年国が進めてきた低医療費政策にあります。医師,看護師を始めとした医療従事者の大幅増員, 診療報酬の増額,医療費の増額,社会保障の拡大等の抜本的政策転換を求める国民の怒りと声を高めていくことで展望が切り開けるものと考えます。小児科学会 に対しては,小児医療の切り捨てに繋がる“小児医療体制の改革ビジョン”政策を改めて,国民と共に政府の低医療費政策の転換に立ち上がることを求めたいと 思います。

(2007年12月)