インフルエンザワクチンをしているとインフルエンザウイルス検査が「弱く出る」

インフルエンザの診断は,迅速検査キットのおかげで大変容易にできるようになりました。今シーズンになって,ワクチンをしているとインフエンザ検査の反 応が「弱く出る」と感じるようになりました。まるで,根拠のないことを感じているわけではないのです。実は,インフルエンザワクチンをしていると,症状が 出ているのに,インフルエンザウイルスの検出率が極端に落ちるという相当厳格な試験結果が表の2つです。
まず大事なことは,試験Aの「発熱を伴う気道感染率」がワクチンと偽薬群の間に差がないことです。これは,ワクチンが臨床症状を減らす効果がないことを証明しています。同様に,試験Bでも「インフルエンザ様疾患」にかかる率は両群でほぼ同じです。
にもかかわらず,試験Aでも試験Bでも,インフルエンザウイルスの培養陽性率がワクチン群の方が偽薬群の3分の1に減るのです。発熱やインフルエンザ様 の症状が出ているのですから,インフルエンザにかかっていても鼻咽頭からのウイルス量が減るかなくなる,または別のウイルスに感染しているのかのどちらか と考えられます。
ウイルス培養陽性率の低下は,ウイルス量の減少の延長線上にあるのですから,迅速検査で「薄くでる」のも当然と思われます。
のどや鼻のウイルス培養陽性率が低下することは,他人への伝染を防ぐことが予想されますが,これは群馬県前橋市の観察などでも否定されています。
驚いたことに,病院勤務のお母さんが「うちの子はワクチンをしたのにこんなにはっきりでたんですか?ふつうワクチンをしていると薄く出ますよね!」とおっしゃったのです。鋭い観察力です。

(H)

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ワクチン群(%)  偽薬群(%)
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試験A
発熱を伴う気道感染の率            23       25
インフルエンザウイルス培養陽性率      5.5      15.9
試験B
インフルエンザ様症状             14.5      15.9
インフルエンザウイルス培養陽性率      7.5      24.9
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試験A:対象者 6-24ヶ月児 411人,RCT. (Hoberman A et al. JAMA 2003;209:1608-1616. 注;この数字は本文にこっそり書かれています。)
試験B:対象者 1-65才, RCT. (Edwards KM et al. JID 1994;169:68-76.)