またもや「患者づくり」 慢性腎臓病

8月18日の朝日新聞には「透析患者抑制5年計画」との見出しで,人工透析患者が増加しているので,腎臓の働きに異常のある「透析予備軍」を15%ほど抑 えることをめざす研究を始めるとの記事がのりました。腎疾患の進行を止め,透析に至る患者を減らすことは,透析にともなう様々な困難をさけることができる ので,医療の重要な目標です。しかし,この記事からは少々おかしいことがわかります。
今秋から厚労省が始める研究というのは,開業医500人程度が参加し,尿蛋白が陽性で腎臓の働きに異常があり,将来透析が必要になる恐れがある 40-74歳の2500人を登録し,日本腎臓学会が昨年作った「CKD(慢性腎臓病)診療ガイド」にもとづく投薬や食事療法などを実施し,5年後に評価す る,となっています。ということは,このガイドラインの信頼性を検証する必要があった,ということです。
昨年9月に発行されたこのガイドラインはアメリカのNational Kidney Foundation Practice Guidelineの定義と同様,
1)尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか—特に蛋白尿の存在が重要—,
2)GFR(腎機能)< 60 mL/min/1.73m2,
のいずれかまたは両方が3ヶ月以上持続する,となっています。そしてCKDのステージ分類では,先のCKDの定義を満たすのはステージ3以上なのです。ところが,それより軽度のステージ1と2,さらに「ハイリスク群」が作られて対象者にあげられています。
「CKDハイリスク群とは」というページには「CKD発症のリスクファクターとして,高齢,CKDの家族歴,過去の検診における尿異常や腎機能異常およ び腎形態異常,脂質異常症,高尿酸血症,NSAIDsなどの常用薬,急性腎不全の既往,高血圧,耐糖能異常や糖尿病,肥満およびメタボリックシンドロー ム,膠原病,感染症,尿路結石などがある」となっています。これですと高齢者はもちろん,ほとんどの人がこの中に含まれます。
それではこれらの人には何が要求されるのでしょうか?禁煙の実行,BMI < 25(170 cmなら73 kg未満)への減量,血圧は130/80 mm Hg未満に下げるなどとされています。さらにステージ1と2では,血圧を130/80以下にするためACEかARBを飲ます,となっています。ハイリスク 群では単に130/80にするとなっています。おかしいですね。ともかく,これでは高齢者というだけで130/80にまで下げるよう降圧剤を飲まされる事 態になります。
これらの方針に根拠があるのでしょうか?アメリカのガイドラインでも根拠はかぎられているようです。そこで,それなりの根拠を作るために,調査をするとのことですが,500人もの開業医が参加して,研究の計画を遵守できるかどうかもはなはだ疑問です。
しかし,CKDによる病気作りはメタボと違い世界的に展開されており,インフルエンザワクチンと同様,その問題点を明らかにするのには大きな努力が必要かと思います。

H