インフルエンザ・ワクチンが効かない証拠

「新型」インフルエンザ用のワクチンが,日本製2700万人分に加えて,輸入用も5000万人分「確保」される予定のようです。すでに日本のワクチン会 社には,新技術開発資金として1400億円がつぎ込まれることが決まっていますが,さらに今回の購入費用に1400億円をつぎ込む,となっています。しか し自己負担額は2回分で7000-8000円程度とするとのことで,「季節性」のワクチンを含めると大きな自己負担になります。ともかく国が買い取って医 療機関に販売するのですから,「新型」が流行しなくてもワクチン会社は丸々利益を確保できるしくみですので,笑いが止まらないでしょう。
今回は,インフルエンザワクチンが効かないことの証明する材料について紹介します。

<日本のワクチン>
1)厳密な比較試験:ワクチンの効果を最も科学的に証明できる方法は,対象者を偏りなしに接種する人達としない人達に分け,その2群の間で発病率を調べる 方法(厳密な比較試験,RCT)です。日本のワクチンでは,たった一つしかRCTの試験がなく,しかもそれは効果を証明できていません(Sugaya A et al. J Infect Dis 1970;122:472.)
2)疫学調査の代表:前橋レポートは,ある地域で児童の圧倒的多数にワクチン接種をしたにもかかわらず,ワクチンをしていない学校との間に,欠席率など差がなく,流行の阻止,症状を減らすこともできないことを証明しています。
3)その他の比較試験:現在の高齢者への接種の根拠となっている厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)総括研究報告(1998-1999) と,平成12年度厚生科学研究「乳児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究」があります。これらは,とても比較試験とは言えないずさんな研究 です。
まず比較試験の基本は,接種群と非接種群の間に年齢や基礎疾患の差がないこと,さらにインフルエンザの場合ではインフルエンザ流行期以外の時期に発熱率 などで差がないことを提示することです。接種群と非接種群の間でこれらに明らかな差があれば,ワクチンの効果を比較する意味が限りなく小さくなります。少 なくとも,これらの差を補正することが必要で,試しに補正するとまるきり効果がないことがわかりました(前者は林,後者は高松・林の大阪小児科学会発 表)。

<世界的のワクチン>
世界の研究を総括的に評価した「コクランレビュー」が最も信頼できます。
1)高齢者:RCTでは効果は証明されていない。疫学調査はバイアスがある。林の批判がコクランライブラリーに載っています。
2)気管支拡張症:根拠が無い。
3)健康な大人:症状を減らすが,取るに足りない効果。
4)子ども:2才以下では効いたという証拠はない。子ども全体に接種するためには研究がたりない。
5)喘息:悪化するというデータはないが,発作を予防するというデータもない。
6)cystic fibrosis:データがない。
7)化学療法中の子ども:データなし。
8)高齢者施設で働く労働者:施設居住者の感染を防げない。
9)COPD:悪化を少なくするが,林が調べると「全粒子」ワクチンの1研究のみが効いたとしている。
10)冠疾患:データが不十分。

副作用については,次回に報告します。

2009.9 H