福島原子炉人災に対する考え方

3月11日の関東東北大震災で福島第一発電所の原子炉群が危機的状況に陥っている。情勢は流動的であるが、健康被害という観点からの基本的視点を述べたい。

1. どのくらいの放射能が流出しているのか

いわゆる核爆発は起こりにくい。もし起これば放射能量の単位として広島型でさえ15x1021ベクレルという量が空中に。原発内のウラン燃料ははるかに多い。チェルノブイリでは核爆発はなく、推定放出放射能は1018ベクレル位と。したがって核爆発が起これば100km、200kmといった範囲の避難で追いつくはずがない。今回の放出量については3月19日の朝日新聞報道によるとソ連からとの情報で、チェルノブイリの5%くらいではないかとのこと(算定方法等は不明)。

2. どのくらい人体に影響するか

ベクレルという単位は純物理量で、人の側からみると同じベクレルでも放射線の種類や臓器などにより人体への影響がことなるため、ベクレルの比例量であるが被ばく線量の単位はシーベルトという。放射線被ばく症状は急性期障害と晩期障害にわけ、急性期障害は被ばく線量に比例し、胸部レントゲンでは0.05ミリシーベルト(1ミリシーベルトは1シーベルトの1/1000)、CTではその100倍で、この程度の被ばくでは急性期症状はでない。100-200ミリシーベルトを越えるとめまいなどを訴える人がでる。1000ミリシーベルト(=1シーベルト)を超えると死者が出始め6シーベルトでは全員死亡する。ちなみに広島では瞬間100シーベルトと推定。福島原発では爆発の際、原発敷地内で3月15日瞬間12ミリシーベルトを記録(3月21日朝日)したとある。原発内で働く労働者の急性障害はどうかについては現状をはかる上でも重要であるが、情報は隠されている。特に地上定点の経時観測、情報の公開が重要である。
今のところ問題は晩期障害に対する影響である。チェルノブイリでは3年後,30km離れた地表での測定で、なお年間換算で胸部CT2回分のセシウム137が検出されたとされる(高木仁三郎)。晩期障害とはがん化、老化のことであり、どれだけ少しの放射線でも影響する。集団全体で1シーベルト被ばくすると、ゴフマンの推計では3700人、国際放射線防護委員会(ICRP)の推計でも100人がん死が増加するという。
外部被ばくについてはできるだけ遠くに避難するしかない。放射性物質を体内に取り込んで起こる被ばくを内部被ばくというが、被ばくの50%以上、高木氏によればチェルノブイリ被ばくの80-90%は内部被ばくだったという。水、野菜、ミルクなどによるが、甲状腺に蓄積するヨウ素131による被ばくが最もこわい。
小児の甲状腺がんは10万に対しと少ないはずだが、チェルノブイリをかかえるベラルーシでは10年間、10倍以上の小児甲状腺がんが発生した。また、小児白血病も明らかに増加した。このように、晩期障害への恐れはとどまるところがない。

3. 対策

放射線災害の原則はできるだけ遠くに避難することであるが、外出時の被覆、ヨード剤の服用、ミルクや飲料水、野菜摂取への注意などが必要で、内部被ばくを最小限にする試みをすべきである。情報があいまいな中、事情が許せば感受性の強い思春期、乳幼児の小児はできる限り遠くに避難すべきである。政府は危険性についての情報公開と退避希望者への早急なコミュニティー確保をすべきである。

4. そのほか

原発敷地内で作業に従事されている労働者、消防隊員などの安全管理と健康情報の公開、後々のための生物学的被ばく線量推定の調査なども政府に要求すべきである。原発中止を求めることは言うまでもない。