医療問題研究会「提言」(NEWS No.447 p01)

医療問題研究会から、以下の「提言」を、医療関係者以外の多くの方々に対しても発表しました。ご意見がありましたら医問研までご連絡ください。

私たち医療問題研究会は、福島県での原発事故による健康被害に関する健康相談会に参加するとともに、避難者に対する大阪での健康相談会の実施や子供たちの一時避難キャンプでの健康相談等の取り組みを行ってきた。

SPEEDIの試算によると、福島第1原発の事故によって、放射性物質が大量に放出され、2011年3月12日から23日の12日間だけでも、20京ベクレルもの放射性ヨウ素(I131、I134)がばらまかれた。空気中の放射性ヨウ素を吸い込んで、内部被曝した1歳児の甲状腺等価線量は最高500mGy(mSv)で、福島市では100 mGy(mSv)に近い値になると見積もられている。被曝による甲状腺がんの発生が危惧され、福島県での甲状腺健康診断が実施され、その端緒についたところで,早くも甲状腺がんのこどもが見つかっている。

チェルノブイリの事故では白血病や甲状腺がんなどのがんが増加し、妊娠異常や奇形の増加、その他全般におよぶ健康障害の増加が確認されている。そして、被害の範囲は広範囲におよび、甲状腺等価線量が10mSv以下のベラルーシのミンスク市でも,被ばく以前の7倍以上の甲状腺がんの発生をみている。これは関東地域での汚染に相当すると考えられる。福島県の近隣県でも、甲状腺健診などの健康診断の実施を求める声が上がっている。われわれは土壌中から放射性セシウムが検出される地域は被曝地域と考え、その地域での無料の健康診断を国の責任で実施することを強く要望する。

国は年間20mSv以上の地域を避難地域としているが,チェルノブイリと比べても地域が限定されており,さらに低線量の地域でも危険性が大きく、もっと積極的に避難をすすめる地域を拡大すべきであり,避難に対する支援をおこなうべきである。

また,福島県からの避難者や福島県外からの避難者に対しても,甲状腺がん等の危険性に対して健康診断をすすめるべきである。福島医大の統制下という問題はあるが、福島県からの避難者に対して、関西の府県での甲状腺の健診をできる医療機関が指定されてきている。しかしながら,福島県以外からの避難者に対しては何の保障もなされていない。被曝して健康に不安を抱えているひとを対象に無料の健康診断を実施するように提言する。

2012年11月27日

医療問題研究会