医療トピックス-薬のデータ隠しとの闘い(NEWS No.447 p03)

イギリス医師会雑誌BMJが「データの開示キャンペーン」の一環として、タミフルの臨床データ全ての情報公開を要求するための、ホームページを作りました。
また、2012年11月3日号の表紙は、’THE BATTLE FOR SECRET DRUG DATA’として、戦闘ライン(たぶん「マジノ線」)のイラストを描いて、まさに巨大製薬会社との「戦闘」だ、というような感じです。


さて、ホームページには、タミフル開発の歴史、販売の歴史、「研究」の歴史などの概括があり、カイザーのレビューでタミフルがインフルエンザの合併症に効くことが「証明」され、世界中の政府が備蓄をした、などが列記されています。
その中には、2009年の7月にKeiji Hayashiがコクランに、レビューの批判を送り、「このレビューは、刊行されていないデータに基づいていること」「著者が全てロシュ社のお金をもらっていること」を指摘、というようなことが書かれています。それを見て、誇らしいとともに最近は抗インフルエンザ薬問題について何もできていないことを反省させられています。
さて、BMJのこの号に載った、2つの重要な論説は、「薬のチェック」のホームページに完全な和訳を載せてくれていますので、是非ご覧ください。
その一つ、デイヴィット・ペインの論文のタイトルは「特集 データ公開キャンペーン、タミフル:薬剤の秘密データに挑む戦い」であり、そのためのホームページ開設の意義が述べられています。データの開示の必要性は、薬剤は公的な資金を使うのであるから、その資金を出す国民に公開されることは当然であること、またデータが出されていれば、パイオックス(ロフェコキシブ)などの薬害がもっと早く発見されたし、このような秘密政策によって、他にも多くの薬害をもたらしたことをあげています。
タミフルに関していえば、コクランレビューをしたジェファーソン氏はCDCやWHO に対しても、タミフルを推奨している根拠を示すことを要求していますが、これまで拒否され続けていることの不当性をも訴えています。
BMJ編集長のフィオナ・ゴッドリーの論説によれば、BMJは著者が誰から金などをもらっているかだけでなくその研究が、患者レベルのデータを妥当な要求に応じて、提出しない限りその論文を出版しないとを決定、来年の1月から実施するとのことです。
これらの「闘い」はまさに患者を使い、患者のために使うデータも企業秘密として私物化し、患者や市民をだましている「1%」の巨大企業に対する「99%」のための闘いであり、是非連帯しなければなりません。
今回も、「薬のチェック誌」がいち早く日本での連帯の行動をされています。医問研としては当面、インフルエンザワクチンに対する闘いとして、日本小児科学会「広田論文」への批判などに取り組みます。
また、製薬大企業以上に、データ隠しをしている福島県「健康管理調査」のデータ公開要求を様々な形で繰り広げなければと思います。

はやし小児科 林