いちどくをこの本『低線量放射線被曝―チェルノブイリから福島へ』今中哲二著(NEWS No.447 p07)

後書きに「稲ワラ汚染で被害を受け借金経営に追い込まれた肉牛農家さん、ホダ木が放射能汚染し廃業寸前に追い込まれているしいたけ栽培農家さんなど」「突然の放射能汚染という″不条理な災厄″に苦しんでおられる話を聞きながら、私にできることは、やるべきことはなんだろう」「去年の3月11日までは『原発で事故が起きたらとんでもないことになりますよ』と警告しておけばよかったのだが『福島後のいま』は」「被曝のもたらすリスクを勉強し」「自分で判断できるように」「知識を提供」とあるように、ベクレル、シーベルトの意味が分かりやすく説明されている。
僕自身、新しく知ったことがいくつかある。これまで、土壌中の放射能量を測定する際に何センチの厚さで切っているのかがわからなかったが、測定用に土壌を採取するサンプラーという器具があって、「これは直径15㎝の円柱で深さ5㎝ほど」で土壌を切り取るようになっていることを知った。これでベクレル/㎏とベクレル/m2の関係がわかり換算ができるようになる。
原発事故直後に大舘村に入って大量の空間線量を測定した時、その中で住民が生活していた話は衝撃的である。そのときに土壌サンプルを分析した結果チェルノブイリほどではないにしろ、プルトニウムが検出されていることが記載されている。
内部被曝の危険性や100mSv以下でも危険性があること、LNTモデルが妥当であることの説明の上で、たとえわずかな発がんリスクの上昇であっても原発によ

ってもたらされる「余計なリスク」であることを考えること、ICRPが“安全基準”を設定していること自体が問題であることを指摘されている。
そして、広島・長崎の被爆生存者12万人の追跡寿命調査(LSS)と関連して、原爆放射線量評価に関する体系の変遷と著者自身の研究がⅢ部資料として記載されている。こうした長年にわたる科学的真理を求める地道な研究が背景にあることも知ることができた。
皆さんの一読をお勧めする次第である。

東大阪市保健所 森