講演に行ってきました -現場の臨床医に放射線の危険性を訴える-(NEWS No.448 p05)

石川県医師会の生涯教育講座で「低線量・内部被ばくのエビデンス」について、講演の機会がありました。2012年4月、福岡の日本小児科学会で交流のあった「原発の危険から子どもを守る北陸医師の会」の方々のご尽力によるものです。医師会の公式行事なので、いろんなご意見の方もおられると緊張して臨みました。

内容は第一線の臨床医として、子どもたちが置かれている放射能事故レベル7の実態を理解してもらうことにおきました。身近な診療放射線領域での膨大な低線量被曝によるリスクのエビデンスを紹介し、100mSv論者がこれらを無視していること。10mSvでのリスクは国際的に常識となっており、福島で子どもを20mSvで遊ばせる異常さを示しました。また線量評価の困難な内部被爆も、ドイツのKiKK研究の歴史的な意義、チェルノブイリでの形態障害の症例や発生率の年次推移により、ICRPのシーベルトによる換算では人体へのさまざまなリスクを科学的に評価できていないことを示しました。最後に日本の現状としてX線フィルムの黒点を示し、都内も含め事故後の放射性微粒子は広範囲に浮遊しており、子どもたちの内部被曝の評価のために検尿によるセシウム検出の必要性などを訴えました。

1時間余りの講演時間でしたが、100名あまりの医師会員が真剣に聴いてくれました。WHOのがん発生予測は過小評価ではないか、ICRPのセシウムの体内蓄積のモデル図の意味について、乳歯や毛髪の保存の必要性など、活発な意見や質問が出されました。こういった真実を伝えると福島への差別を助長することにならないか、との不安には、チェルノブイリの教訓から、長い年月で汚染は拡散しており健康被害は全国民の課題であり、第一線の臨床医が力を合わせてレベル7に立ち向かわねばならない、と答えると、多くの方々がうなずいてくれました。

医問研発行の「低線量・内部被曝の危険性」の本は、持参した17冊が完売、8冊の注文を受けて帰りました。帰宅後すぐ、富山の小児科医から「大変なインパクトをもって拝聴した」とのメールがあり、近いうちに勉強会を開きたい、とのことで、資料や情報の交換をすることになりました。避難者や子ども達に寄り添う現場の臨床医に、医問研が培ってきた内容が役立つことを願っています。

入江診療所 入江