いちどくをこの本『137億年の物語―宇宙が始まってから今日までの全歴史』 クリストファー・ロイド著 (NEWS No.450 p07)

不思議な本である。物語でもなく、歴史書でもなく、自然科学書でもない。あえていえば、そのすべてを備えている。地球(すべての生命)の全歴史を、宇宙と自然界の成り立ちから物語った書物。学校に行かなくなった自分のこどもに、11才になるまで両親が自宅で世界について教えた内容を、父親が本にしたものだそうだ。

すごく分厚い!字数もページ数も極端に多い!重い!しかし、挿絵や写真は、知識欲と興味をさそう、適量の色彩豊かなバランスで配置されている。実を言うと、まだギリシャ文明をやっと過ぎてローマ時代を読み進めている。でも、ここで本書の半分くらい。しかも、地球が誕生してから現在までを24時間とすると、最後の1秒を遅々として進行中ということになる。

こんな風変りな本は初めてである。決してさらさらと読めるわけではないが、引き込まれてやめられない。はずかしい話だが、地球と宇宙の関係や、単細胞生命が人間になるまでのことを、ほとんど知らなかった。変な言い方だが、自分が死ぬまでに読めてよかった。自分という人間が、この宇宙でいかなる生物なのかを知って、自分のまわりの空気が無限大に一気に広がった感じがする。大宇宙のほんのひとかけらの地球の、小さな日本にある現在「一般的」なことは、決していつもそうであったのでなく、137億年の変化にみちた歴史の上に成り立っていることが、科学的説明をもって語り説かれる。

間違いなく謙虚な気持ちになり、自然を含む他者の歴史に学ぶことの大切さを思いしらされる。今日の人類が、いかに傲慢で他者から学ぶことをおろそかにし地球を破壊しつつあるかを、大言壮語や説教調でなく静かな語りで、しかし、確実に心に響く言葉でせまってくる。

太陽が自分の祖先につながると思うと、友人がいつか、さみしさや孤独が、ふるさとの夕日をながめて癒されると語っていたのを、より共感できる気がする。

世界の国々の歴史は、必ずどこかで共通の歴史をまじえていることもよく読み取れる。人類の一人ひとりの命が、同じ137億年の歴史の重みを持つ、かけがえのない存在だというメッセージは、その重みを担い現代に生きる一人ひとりの生き方を問うものである。

きただ女性クリニック 北田