インフルエンザもほぼどっかに隠れたようで、季節遅れですが来年に備えて考えました。
今年から、インフルエンザにかかったら、これまでの「解熱後2日を経過するまで」から大幅に延長され、すべてのお子さんが「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(乳幼児は3日)を経過するまで」登園・登校停止になりました。共稼ぎをしている家庭にとっては大変です。この「基準」は豚インフルエンザの時に、どさくさにまぎれて作られたようですが、今年から厳密になり、文科省まで追随してしまいました。
そこで、この変更の根拠は何かを調べてみました。ウソばっかりでした。2012年改訂版「保育所における感染症対策ガイドライン」の26Pには、『「発症から5日を経過」とされた理由は、現在、インフルエンザと診断されると抗インフルエンザ薬が処方されることが多く、感染力が消失していない時期でも解熱してしまい、解熱を基準にすると出席が早まり、感染が拡大することが懸念されたためです。』となっています。
<ウソ1>
この基準は抗インフルエンザ薬を使った場合のみの根拠しか示されていないのに、使わない子にもあてはめられています。これが最大のウソ=間違いです。
<ウソ2>
ウイルス排出は「自然経過で7日程度、抗インフルエンザ薬の効果で解熱は1日程度早くなりますが、ウイルスは5日間程度分離されたという報告や」と、まるで排出期間が抗インフルエンザ薬を使った方が短くなるかのように書いています。しかし、引用文献を見ますと、この「5日間」は発病からでなく、タミフル使用日からの日数です。タミフルの使用は発病から1-2日遅れますね。この文献の他のデータからも、タミフルを飲んだ方が自然よりもウイルス排出期間が長くなる可能性が高いのです。そもそも、この論文は「抗ウイルス剤投与後、ウイルス量は徐々に減少するが、小児では解熱時もなお半数以上の症例がウイルス分離陽性であり、一定の耐性が生じている。感染対策にウイルスは移設と薬剤耐性の評価が重要である。」(要約)という論文なのです。
<ウソ3>
「また、抗インフルエンザ薬(オセルタミビル)を投与して4日目に,90%の患者が解熱していたにもかかわらず、50%以上の患者からウイルスが検出されたという報告(Tamura D et al・・・)」となっていますが、この文献では、オセルタミビルを投与した日から3-4日で68%、5-7日で69%のウイルス排出があったとなっています。(ちなみに、リザベンではそれぞれ50%と39%)ですから、これからすれば、5日ではダメで、少なくとも投与し初めて7日は休む必要があることになります。
<ウソ4>
「幼児にあっては、(解熱後)3日」とされた理由は、15才以下、特に3才以下ではウイルス残存率が高いという報告があり」となっています。その根拠文献を見ると、これもウイルス排出は、タミフル投与では短くならない、という文献です。3才以下とそれ以上を比べたデータなんてどこにもありません。
<ウソ5>
最後になりましたが、インフルエンザウイルス排出は発熱前からあり、長くは2週間も続く場合もあるようです。また、1割以上のお子さんは、感染してもほとんど症状なしに終わるというデータもあります。また、迅速検査では診断漏れも出てきます。ですから、こんな施策の効果は、保育園をこの施策をした群と、しない群に平等に分けて、どちらが流行が少なかったかを評価しなければ分かりません。こんなことは公衆衛生のイロハと思うのですが。
こんなのをウソ八百というのでしょうか?
はやし小児科 林