迷走神経反射では説明困難:炎症性サイトカイン-S1P1刺激を介する血圧低下では?
子宮頚がんワクチン接種後の失神は、迷走神経反射による良性のものとされ、国の評価では、重大なものと認識されていません。しかし、一般の注射や採血で生じる失神と比べて、著しく高頻度に起きています。そこで、その発症機序について考察しました。
その際、FTY720(商品名イムセラ:多発性硬化症(MS)治療薬)の「心拍数低下」作用との類似性に注目した。生体内でリン酸化されたFTY720はS1P1受容体に対するアゴニストで持続的作用の結果機能的アンタゴニストとして働く。
S1Pとは
S1Pは心拍数低下作用を有するリン脂質で、5種類のサブタイプがありS1P1受容体はリンパ球や神経細胞、血管に高発現している。S1P1受容体アゴニストのFTY720は短期には心拍数低下を示す。*1 感染症罹患時、マクロファージや樹状細胞の抗原認識に始まりさまざまな免疫細胞を活性化し炎症性サイトカインの放出する結果、S1P が産生され、S1P1受容体を刺激し血圧を低下させる。*2
HPVワクチンは樹状細胞刺激作用が強い
HPVワクチンの抗原、すなわち再構成したウイルス様粒子は、他のワクチンと比較し樹状細胞に対する作用が極めて強く、しかも強力なアジュバントによりさらにその作用が増強されている。*3これらのことから子宮頚がんワクチンは他のワクチンに比較して特にS1Pが活性化されやすい可能性が高いと考えられます。
高い安全性が求められるワクチンとしては重大すぎる害
服用開始時にはS1Pと同じ作用を引き起こすFTY720では初回投与時には12誘導心電図、心拍数、血圧の測定の測定することを添付文書に明記しています。高い安全性が求められるワクチンでそのような注意喚起もなく死亡例まで出していることは大きな問題です。
死亡例
●サーバリックス(子宮頚がんワクチン)
心室頻拍発作の基礎疾患がある10代女性が接種2日後心肺停止状態で発見された。心室頻拍発作から心室細動に移行し、致死性不整脈で死亡したと推定されるがワクチン接種との因果関係は不明。*4
●イムセラカプセル(FTY720)
海外で初回投与後6時間の観察期間には異常を認めず、投与21時間に心停止を発現した患者と24時間以内に死亡した状態で発見された患者が報告されました。*1
*1 イムセラカプセル適正使用ガイド改訂第2版
*2 生化学第84巻第2号,pp.92―101,2012
*3 TIP2013年4月号
*4 厚生労働省:子宮頚がん予防ワクチン副反応報告状況について(H23.8.23~11.30)
(薬剤師 小林)