甲状腺がん多発(27例)を受けて(NEWS No.454 p01)

By: wikipedia

第11回「県民健康管理調査」検討委員会(平成25年6月5日開催)は、「甲状腺検査」結果で、18歳以下の甲状腺がんの症例数を公表した。(2011年度分)福島第一原発に最も近い市町村(主として浜通り)の受診者40,302名中11例の甲状腺がん症例(7例が手術後確定で4例が細胞診)、(2012年度分)それに続く市町村(主として中通り)の受診者134,074名中16例の甲状腺がん症例(5例が手術後確定で11例が細胞診)であった。

甲状腺がん症例が27例で、通常考えられない多発が生じている。この事実が示す重大な内容を確認し、今後の課題を訴える。

1.甲状腺がん発生数27例の統計学的な検討を行うと、2011年度の甲状腺がん症例11例で53.97倍(95%信頼区間:28.24倍-97.21倍)の多発、2012年度の16例で23.75倍(95%信頼区間:14.25倍-38.37倍)という統計学的に有意ながんの多発になる。

注:甲状腺がん症例の有病割合を甲状腺がんの15歳から19歳における全国発生率100万人に5人(1975年から2008年)と比較した場合。

この事実は、甲状腺がんの多発(疾病のアウトブレイク)であり、福島県のこの地域で大変な異常事態が生じていることを意味しており、疫学の専門家からも証明されている(岡山大学大学院・津田敏秀氏ー環境疫学)。また、原発事故の4年後から極めて明瞭な多発が見られ始めたというチェルノブイリ事故の経験から考えると、このままでは甲状腺がんが数年後に爆発的に増加する可能性を強く示している。

2.今回、2012年度の調査結果(主として中通り)は、初めての「相対的低線量地域」での調査結果であり、甲状腺がんの多発が確認された。この地域は、従来、「被ばく線量が低く、健康被害はない」と宣伝されてきた地域であり、この地域で多発が始まった意味は重大である。すなわち、「相対的低線量地域」でも、実際には相当の被ばくが存在した事実を示しているからである。そして、残念なことではあるが、今後、様々な健康障害が生じえることを示しているし、さらに、関東北部を始め、同様の線量地域、またその近隣地域で健康被害が生じることを示しているからである。

3.2012年度検査対象者(主として中通り)全体では、134,074例中16例の発生で23.75倍の発生であった(2次検診受診率27.3%)。一方、2012年度度福島市の対象者46367例では9例の発生(手術後確定例,細胞診例合計)で、38.82倍(95%信頼区間:19.24倍-74.61倍)の多発であった(2次検診受診率86.6%)。この様に、2012年度対象者では、2次検診受診率が増えると、甲状腺がんの発生数が現在の発表数よりもさらに増加すると考えられる。

現在公表されている2012年度甲状腺がん数は、あくまで2次検診で4分の1の受診が終了した段階での一時的な結果であり、今後受診率が向上し、甲状腺がん症例が増加し、多発が重大なレベルになる事を示している。

4.甲状腺がんが多発している福島県下にあっては、早急に甲状腺がん検診を実施し完了しなければならない(初期被ばくが懸念されるいわき市は2013年度実施予定)。二次健診実施率が低い事実は、早急に解消されなければならない(2次検診で甲状腺がんが発見されている市町村で受診率が低く、たとえば、がんが2例発見されている郡山市で1.1%)。検診データは多くは隠されている可能性があり、プライバシー保護にかかわる情報に配慮したうえで、早急に全面的に公開されなければならない。不幸にして甲状腺がん発症が確認された患者さんには、治療に関して科学的根拠に基づいた最善の医療が受けられるよう、必要なSecond Openion が受けられるように、体制を保障すべきである。

5.今後、甲状腺がんだけでなく、白血病や様々な小児がん、免疫力の低下、妊娠―出産の異常、先天性障害など様々な小児の健康障害が懸念される。地域的には、福島県以外でも健康障害が考えられる状況になってきている。このままでは、今後様々な小児の健康障害が懸念される。それまで国や県が事実を認めなければ、多くの子どもたちの命や健康が犠牲にされてしまう。子どもたちを放射線障害から守るために、いつでも、どこでも放射能健康診断が受診できる体制を早急に整備すべきである。広範な地域の住民を対象に調査するには行政の協力が不可欠であり、検診を自治体に求めることが必要である。また、調査分析には、避難者、市民が監視し、公開させて行くことが求められる。
(たかまつこどもクリニック高松)