医療トピックス 日本小児科学会の「150mSv以下は障害なし」見解を削除させる!(NEWS No.454 p06)

日本小児科学会(以下、日児)は、低線量被曝の障害性を否定する日本の学会の中でも、最もひどい150mSv以下では問題ないかのような表現をした「放射線被ばくによる小児の健康への影響について」(以下、考え方)を事故の2ヶ月後からホームページに載せ続けてきました。私たちは、この2年間、「大阪」「近畿」「日本」の各小児科学会での研究発表で、この極端な過ちを撤回するように要求してきました。今回の削除はこれまでの活動の大きな成果です。

加えて、今年4月の日本小児科学会学術総会に合わせて開催された、「全国小児科医の集い」で、岡山大学津田敏秀教授が、100mSv以下でも障害性が明らかであること、これらを認めない日本の学会の間違いが総合的・科学的に論証されました。同時に、この津田教授の論文が掲載されたパンフレット「全国の小児科医は科学的立場に立って子どもたちを放射線被ばくから守ろう」が作成されました。(これは医問研ニュース読者の皆さんにもお届けしました)

このパンフレットは、同学会会場で約700部配布し、当然五十嵐会長など執行部にも伝わっていたことと思われます。このパンフレットには、日児の150mSv以下は障害が無いとする「考え方」の根拠が示されていないこと、日児ホームページにも掲載されている、五十嵐日児会長が委員長の「学術会議」の「提言」の根拠文献に、実は150mSv以下の被ばくでこそ、被ばく線量に応じて障害が増加することが証明されていると書いた、私の文章も掲載されました。

「全国小児科医の集い」の影響が大きかったのか、山下俊一氏の講演が急遽中止される中で開催された、日児総会で私は「150mSv閾値説」の根拠になる文献の明示を要望しました。五十嵐会長から「検討する」との回答が得られました。

学会直後に、先の「集い」に参加していた育成病院の副院長から私にメイルがあり、「150mSv」の根拠となった文献(UNSCEAR report)が送られてきました。私は、小児科学会から直接に資料が送られてくるのが当然と考え、その由を伝えましたところ、了解されたとの返事が入りました。その後、資料は送られてきませんが、この文献は、すでに私が先のパンフレットの中で検討しているものです。

5月7日に津田教授から高松氏を通じて、日児のホームページの目次から先の「考え方」が削除されていることを知らせてもらいました。同時に、学術会議の「報告」も削除されていました。

これまで、日児という権威と責任ある公的な組織が、一般に公開していた「考え方」や「報告」を目次から削除したことは、日児がこの問題を深刻に考えていることを意味します。その後、放射線医学の元締めのような「放医研」の被ばくの害の有名な図から、100mSv以下は「がんの過剰発生が認められない」という文章がこっそり削除されていることを津田教授より知らせていただきました。日児と放医研の行動は、他の学会などの非科学的見解を全て撤回させる契機となるよう思われます。

(はやし小児科 林)