医療トピックス 降圧剤ディオバンのデータねつ造が明らかにしたもの(NEWS No.457 p02)


ノバルティスファーマ(売上高世界2位)のディオバンが、降圧作用だけでなく心臓・脳・腎臓などを守る効果があるとする、京都府立医大・東京慈恵医大・滋賀医大・千葉大・名古屋大などの研究論文が07-12年に発表さました。その「効果」が宣伝され、ディオバンは日本で降圧剤トップの年間1千億円を売り上げていました。
ところが、これらの論文のデータはねつ造だったと、7月12日読売・朝日・毎日新聞などが一面トップで報じ、その後NHKのクローズアップ現代が、今回のねつ造で臨床試験の信用が低下したから対策が必要との幕引き方針をだしました。
今回、橋本健太郎医師提供の資料を受け、医問研例会で議論した内容を私なりにまとめました。

1) 降圧剤は合併症を防げなく、ほとんど不要なことが明白になりました。

降圧剤が合併症を予防し死亡率を下げることは欧米でもほとんど証明されていませんが、欧米人に比べ心臓病死が1/3にすぎなく、脳卒中死は1.5倍の日本人(アジア人)にとっては、当然効果も違いがあるはずです(この本当の事は、元府立医大Sawadaのねつ造論文にも書いています)。ディオバンだけが日本人対象の大規模臨床研究で、先の合併症予防を証明していたことになりますが、それがねつ造でした。ですから、年間一兆円を超える降圧剤のほぼ全てが、血圧は下げても合併症は防げない、患者に利益のないものだと判明したのです。ですから、他の降圧剤にもの本当の目的である死亡率や合併症を日本人で防ぐかどうかの証明が要求されたわけです。このより根本的な問題から目をそらすために、「ねつ造」にばかり目を向けされるマスコミのキャンペーンがされたと思われます。

2) データ処理は、研究責任者が製薬企業の担当者に「丸投げの状態だった」(読売新聞)

要は、製薬会社がデータをどう使うか決定権を持っていたのです。タミフルが合併症を防ぐという「カイザー論文」も、元データはロシュが処理していました。現在、イギリス医師会雑誌BMJがキャンペーンしている認可薬剤の「元データの公開」が日本ではより一層求められるわけです。

3) 改ざんが見つかった発端は、あまりにも嘘っぽいデータの提示。

ディオバン群と対照群の血圧が、平均値はもとより、データのばらつきを表わす標準偏差SDも全く同じの数字が、一つの研究で多数あったのです。京都研究では、研究参加者のディオバン群と対照群の血圧や血液検査の元の特徴22項目のうち、実に12項目が平均値とSDが全く同じ数字です。他の論文も多かれ少なかれ同じで、まるでねつ造を分かって欲しいかのようなデータ提示です。

4) 日本の薬剤認可も科学的なデータに基づいていない。

医問研ニュースで時々掲載していますが、これに近いことが、薬剤認可のデータでも出ています。例えば、抗インフルエンザ薬イナビルは治験が進むにつれて、発熱に対するデータがなくなり、訳の分からない症状の点数に置き換わっていることは以前書きました。そもそも、現在使われている日本の薬の多くが、高橋晄正氏に教えられながら医問研がそのウソを証明してランセット誌に掲載された、「全般改善度」というシステム化されたねつ造とも言える非科学的評価方法で認可されてきたものです。これもまた、製薬会社にとっては触れたくない問題なのです。
(はやし小児科 林)