医療トピックス 日児のホームページは、実質的に150mSv閾値説を撤回している(NEWS No.458 p02)

日本小児科学会(以下、日児)が、あたかも150mSv以下の被曝では、何の障害も生じないかの「考え方」をホームページに掲載していた問題で、今年4月の日本小児科学会総会で、私が根拠を示すよう要望したこと、その後この見解がホームページの目次からなくなったことはすでにお伝えしました(医問研ニュース454号)。

その後、日児は「放射線被ばくワーキンググループ」を作って、検討した結果をホームページで改めて公開しました(7月22日付け)。

先の150mSvに関する意見は変えないが、それは「参考資料」となりました。かわりに「このように、100mSv以下の被曝による健康に対する影響は、統計学的に明らかではありません。」としながら、ICRPなどでは「放射線防護上の立場から、100mSv以下の被ばくでも直線的に放射線被曝線量に比例して健康リスクがあると仮定して、少量の被ばくでも、その量を加算した積算量に応じたリスクが生じ、100mSvになると、そのリスクが科学的に証明されたとしています。」と、訳が分からない文章ながら150mSv閾値説を撤回しています。また、100mSv以下での障害も否定しない文章になっています。

もちろん、この見解自体も大きな間違いがあるわけです。そこで、岡山大学津田教授のご意見を伺いながら再反論を用意している時に思いついたのが、日児が150mSv閾値説の根拠とした論文の著者に直接メイルを送り事実を確認することです。

しかし、第一関門は、私の書いた日本語の英訳でしたが、うれしいことに京大医学生の加畑さんがネイティブの助言も得て訳してくれました。また、私の個人的メールでは、「なんじゃ?こいつは」で終わるかも知れないと、高松勇氏が会長で私も委員をしている大阪小児科学会地域医療委員会として発信していただくよう要請し、了承されました。現在、返事を待っているところです。どんな返事でも、また来なくても、それを反映した日児への反論を考えることにします。

(はやし小児科 林)

<以下は、手紙の日本語版です。英語版はより丁寧な文章になっています。>

Dear Preston

私たち日本の小児科医は福島原発事故の子ども達への影響について大変心配しております。ところが、日本小児科学会は事故直後から150mGy以下の被曝では、障害が生じないかの主張をホームページで公開しております。

http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_130722.pdf

以前は、この主張の根拠が不明でしたので、今年4月の日本小児科学会総会で私たちの一員が質問しましたところ回答があり、その根拠があなた方の論文「Radiation Research 168, 1-64 (2007)」であることを発表しております。私たちは、あなたがたの文献から、そのようなデータや考えの記述を見つけることができませんでした。私たちは、この日本小児科学会の見解は、あなた方の著書と矛盾すると存じます。

私たちは、あなた方の論文が、日本小児科学会という日本では権威ある学会に誤って使用されていることを危惧しているところです。

あなた方は、あなた方の論文から、「この論文では最小有意線量域が0-0.15Gyと算出されましたので有意な発がんリスクを示す線量は0.15Gy(ミリグレイ)以上となります。」「統計学的には、約150ミリシーベルト以下の原爆被ばく者では、がんの頻度の増加は確認されていません。」との結論を出すことは正しいとお考えでしょうか?

日本の子どもの健康に関わる極めて重要なことですので、ぜひお答えをいただきたい。

大阪小児科学会地域医療委員会長 高松勇