医療情勢 介護保険改悪 安倍政権下での社会保障審議会介護保険部会の介護保険改悪案批判(NEWS No.458 p03)

要支援者150万人を予防給付の対象から外して地域支援事業に移すというのが介護保険制度改悪案の最大の柱だ。
地域支援事業には、サービスの質や内容について全国一律の基準がない。
一定水準のサービスを保障する国の責任を放棄して、サービス水準や種類、内容、利用料を市町村任せにして、サービス水準切下げのローカルルールを全面解禁するのが狙いだ。

また、特別養護老人ホーム(特養)入所対象者を「要介護3」以上に限定する。入居者47万人中要介護1、2の人は5.5万人と1割以上であり、介護・医療難民が大量に生じる。

介護保険利用料の1割自己負担を、一定以上所得があれば2割に引上げる。
基準は、年金収入280万円か290万円のいずれか(夫婦なら359万円か369万円)。
65歳以上の約3000万人の2割程度が対象になる。在宅サービス利用者は軒並み2倍になり、特養利用者で月7千〜1万5千円もの負担増になる。
サービス利用抑制や将来の一律2割以上負担への移行のおそれがある。

特養などの入所者には、住民税非課税の場合、居住費や食費を軽減する「補足給付」があるが、預貯金(単身で1千万円、夫婦で2千万円)があったり、2千万円以上の不動産があったりすれば支給されない。
不動産を担保に貸付けを行い、死後に売却して回収する仕組みまで導入する。

改悪案に対しては当事者だけでなく、自治体や施設などからも危惧や反対が表明されている。
全国に約1万1千人の会員がいる「認知症の人と家族の会」は「(消費税)増税でもなくサービスの抑制でもない道」を求めて声をあげようと呼びかけている。
埼玉県新座市議会は、要支援者を介護保険制度の適用から外さないよう求める意見書を全会一致で可決。
東京都稲城市の石田福祉部長は「地域支援事業を予防給付の受け皿として扱うことに関しては疑問を感じる」「地域格差が生じる」と疑念を表明。
全国町村会の藤原忠彦会長(長野県川上村長)は「地域支援事業に事業者が手をあげなければ自治体の負担になる」と懸念を表明した。
特養入所対象限定案には、「軽度者の入所はセーフティーネットの役割を果たしている。重度者に制限することは強く反対する」(全国老人福祉施設協議会の桝田和平氏)と反対意見が出ている。

当面介護保険制度に関して以下を要求しよう。介護保険に対する国庫負担割合の引上げ。国の制度として保険料・利用料の減免制度の創設。
「生活援助」などの給付制限やサービス取上げをやめさる。
要介護認定や利用限度額は廃止し、現場の専門家の判断で必要な介護を提供できる制度にする。
介護報酬を大幅に引き上げ、国の責任で介護労働者の処遇改善を進める。
特養待機者を解消するために国の財政支援を大幅に増やし、小規模・多機能施設、グループホームなどが地域にきめ細かく整備されるよう国と自治体の財政支援を強める。

介護保険改悪を頓挫させ、国の責任による高齢者福祉の拡充を求めよう。