原子力規制委員会は、帰還可能線量20mSvを撤回すべき(NEWS No.459 p01)

11月11日、原子力規制委員会は、「基本的な考え方」の案で、福島原発事故による汚染地域への帰還可能線量を、年間1mSvから年間20mSv へと上げるというとんでもない指針を出しました。
他方で,被曝量の測定には、現在の空間線量から個人線量測定に変更するとしています。

1,年20mSvは大変危険です。年20mSv被曝する地域では、5年間で100mSv、10年なら200mSv被曝する可能性があるのです。
医問研編集『低線量・内部被曝の危険性』で紹介したように、100mSv以下の低線量でも様々な障害が出ることが証明されています。
原発労働者では全勤務年月合計で平均19mSvの被曝により癌が増加しています。
より低線量被曝と考えられる一般レントゲン撮影をする獣医の流産が増加、歯科レントゲンで低体重児が増加、CTで癌が増加します。

2,あろうことか、妊婦や若年者も問題ないとしています。
放射線の障害性が妊婦や若年者で高いことを否定するのはこれまでの科学的知見を無視しています。
規制委員会が年齢により障害の差がないとする根拠にしているプレストン2007の論文は、むしろ150mSv以下で癌が増加することを証明しているのです。

3,現在の放射線管理区域は、外部放射線による実効線量が、3月間で1.3mSVを超えるおそれのある区域です。
年では5.2mSvです。そこには一般の人は入れない場所なのです。

4,規制委員会の打ち出した線量を測るバッジなど「個人線量」を基準にするというのは間違いです。
個人線量は「管理地域」できちんと管理できる場合にのみ正確な値がでます。
原発労働者でさえ、バッジ外しやバッジの遮蔽が横行しています。
まして、子どもたちのバッジをきちんと管理できるはずがありません。

5, 個人線量が空間線量より低い(から安心?)とされています。
しかし、両者が一致するとのデータもあります。
たとえ個人線量が空間線量の約4分の1になっている規制委員会が引用したデータに基づくとしても、毎年5mSv、10年で50mSvになるのです。

6,ICRPでも100mSv以下は障害がないなどとはしていません。
小佐古前官房参与でさえ、子どもに年20mSvを許容することに対して抗議して辞めました。

7,内部被曝も無視されています。
年20mSVも浴びる地域では、セシウム以外にストロンチウムも検出されている所が多く、強い内部被曝の危険性があります。
原子力規制委員会は、20mSvを直ちに撤回すべきです。

(はやし小児科 林)