10月24日、三重県津市で公衆衛生学会自由集会第二回「低線量被曝と健康被害を考える集い」開催(NEWS No.459 p04)

集いでは、福島県民健康管理調査結果で小児甲状腺がんのアウトブレイク(異常多発)と避難と検診の必要性が改めて示されました。地元三重県の市民の方の参加もあり、会場の県医師会館ホールは多くの方で埋まりました。

<100mSv問題と甲状腺がん>

自由集会代表世話人の岡山大大学院津田敏秀教授(環境生命科学研究科)は、日本小児科学会をはじめ多数の学術団体が「100mSv以下ではがんの増加が認められない、がんは増加しない」と言う記述や発言の集積から「100mSv以下ではがんは発症しない」と言う「政策判断」に至った現状を厳しく批判されました。
「100mSv以下の被ばくでも、放射線によるがんは増加する。100mSv以下の被ばくでも、がんの増加は実際に、多数の事例で観察されている」と報告されました。

福島での小児甲状腺がんの多発は、日本の甲状腺がんの年間発症率推計値と比較して発生率比でみて、統計学的に有意な多発である。
それは、(原発から)最も近い市町村(浜通りの市町村)で35年、福島市で24年、統計学的有意差は存在するほどの、通常では見られない異常な多発である。
結論として「チェルノブイリでは、甲状腺がんのアウトブレイクの顕著な増加がみられた事故の4~5年後ではなく、1~2年後に症例数は増加し始めた。
福島の事故から29か月たった今、18歳以下の甲状腺がんは増加する可能性がある」と述べられました。

<スクリーニング効果説を批判>

林敬次氏も、チェルノブイリ事故の調査結果を示しながらスクリーニング効果説を否定されました。
「福島県健康管理調査は近い将来『症状がある』甲状腺がんの多発を予想するもの。
県・国は、手術された19人について、どのような判断で手術をしたのか明らかにすべき。甲状腺がんの多発は、その他のがんや健康障害の多発を示唆しており、そのような障害を視野に入れた健診、公開された科学的疫学調査を実施すべきだ」と述べられました。

<公衆衛生学会のシンポジウム>

シンポジウム「原子力災害における公衆衛生の取り組み」の中で、小笹晃太郎氏(放射線影響研究所・疫学部)は、「あきらかにがんのリスクが検出されている線量域はおおよそ100mGy以上であり、低線量域における確率的影響の生じ方は未だに不明確である」として100mSv以下の危険性は分からないと述べられました。

一方で、彼は英文誌の中では「全固形がんについて過剰相対危険度が有意となる最小推定線量範囲は0–0.2 Gy であり、定型的な線量閾値解析では閾値は認められなかった。
すなわち、ゼロ線量が最良の閾値推定値であった」(RADIATION RESEARCH -2012)として、放射線被ばくによるがん発生に閾値はないことを述べておられます。
本来この「100mSvであってもがんが発生する可能性があり、閾値がない」ことは、ICRPをはじめ、放射線被ばくの人体への影響を評価する国際機関では同じ意見で合意されていることです。

会場から、医問研の仲間や岡山大の津田氏らの鋭い質問が浴びせられる中で、小笹氏は「がん発生に閾値はない。
直線モデルは認める」と発言し、低線量被ばくでの危険性を否定できないことを小笹氏に確認させました。

(たかまつこどもクリニック 高松)