京都避難者の相談会でのセミナー参加報告(NEWS No.459 p05)

京都市の西本願寺-聞法会館で第2回「避難者こども健康相談会きょうと」が開催された11月10日、避難者や支援者の方がた参加のもと、医問研の山本英彦氏による「小児甲状腺がん異常多発について」と題するセミナーも開かれました。

その2日後、福島県KKK(県民健康管理)調査の結果(ただし9月30日現在のまとめ)が発表され、2011年3月11日当時18歳以下の子供達の中から甲状腺がん58例(手術で確認26例、細胞診32例)の発見が明らかとなりました。
前回8月20日発表での甲状腺がんは、手術例18例・細胞診25例の計43例でした。今回の発表では、2012年度調査を受けた子供達からの発見が30例から44例へと1.47倍の増加です。
「異常多発」との講演題名は大げさでも、声高でもなかったと言えます。
今回のセミナーは参加者が医療関係以外の人々も多いことに配慮して、模式図・画像写真・動画などを用いて「福島の甲状腺がん検診の目的、方法」「甲状腺とは」「超音波(エコー)検査とは」「結節(しこり)とのう胞」「針生検の実際」などの説明から始まり、検査を受ける子供達の状況に思いを馳せたり、発見された甲状腺がん(平均15mm前後)が子供の甲状腺にとって決して小さいものではないことが実感できます。

次に、KKK調査結果として公表された数値を、国立がん研究センターの甲状腺がん統計(年度推移、年齢別頻度)との比較やチェルノブイリ原発事故による放射能汚染状況や甲状腺がん発見率との比較からも、福島ではチェルノブイリの一部地域に匹敵する多発であり「異常事態!」を指摘。

この事態を前にして、権威ある専門家の人たち」は「異常多発を認めず」「放射線被ばくと関係なし」としています。

  • 甲状腺がんは最短で4~5年で増加したというのがチェルノブイリの知見。今の調査では、もともとあったがんを発見している
  • 人数だけを見ると心配するかもしれないが、20~30代でいずれ見つかる可能性があった人が前倒しで見つかった
  • 数多くを検査したのでたまたま、元々あったおとなしい、ちいさな潜在がん(=微細乳頭がん)を見つけただけ
  • チェルノブイリの甲状腺がんは100mSv以上の被ばくで増加、福島は最大30mSvでの被ばくだから放射線起因の甲状腺がんが発生する筈がない

このような「理屈」に対して、

  1. ベラルーシ・ミンスクでの小児甲状腺がんの手術例数が4年経たずして増加を示したこと
  2. 2002年、ベラルーシで25,446人(事故後に出生した14歳未満)を検査して甲状腺がんの発見ゼロは「前倒し発見説」を否定したこと
  3. 2008年の報告では、1986年以降に生まれた世代である1997年以降、毎年の調査時点で0~9歳の子供からはがんの増加がなかったこと
  4. KKK検査での発見年齢、発見されたがんの大きさからは「微細乳頭がん」とは言い難いこと
  5. 2006年の文献では、ウクライナの甲状腺がんの50%は50mGy以下で発症、10mGy未満でも15%発症していること、また福島の被ばく量についてはWHOでさえ「30mSv以上」の試算を出していること

その他、多くの文献の提示がなされて、「検査をしたから見つかっただけ」「被ばくとの関係なし」に対する批判の正当性が理解できるセミナーでした。

またチェルノブイリからの報告にあるように、今後ますます健康被害が明瞭になってくることが十分考えられ、被ばく軽減策(避難の権利を保障、保養の積極的な活用、安全な食材の確保など)と放射能健康診断の重要性の指摘もありました。読者の皆様に、政府に対して「放射能健診の実施を要求する署名」へのご協力をお願いします。

(小児科医 伊集院)