くすりのコラム 動物用ワクチン事情からみるワクチンの安全性について(NEWS No.459 p08)

猫白血病ワクチンが引き起こすワクチン関連線維肉腫は有名だ。
ワクチン関連肉腫とは猫白血病、狂犬病ワクチンを接種した部位に起きる悪性の線維肉腫である。
犬の狂犬病ワクチンも特に小型犬で接種後の死亡が多く見られるため3年に1度の接種をすすめる獣医師もいる。
アメリカ動物病院協会(AAHA)がそのような使用ガイドラインを示していることが影響していると考えられる。しかし日本では動物の安全を考慮したガイドラインの存在がなく対応が獣医師によってまちまちである。

動物用医薬品と聞くと馴染みがないかもしれないがほとんどがヒト用医薬品メーカーの子会社である。
2010年売上で世界第1位の動物薬メーカーはファイザーで、2009年にワイスの子会社だったフォートダッジ・アニマルヘルスもファイザーに吸収されてしまった。第2位はインターベット/シェーリング・プラウ、第3位メリアルはどちらもMSD系列だが名称が違うのは独占禁止法の影響だ。

平成13年11月22日の農林水産省の薬事・食品衛生審議会 動物用医薬品等部会議事録によるとワクチン関連肉腫の問題がとりあげられていた。

  • 猫の不活化ワクチンは線維肉腫と関係する。
  • 米国では不活化ワクチンを打つ場合は接種部位を変えるとなっているが日本ではそのような議論がない。
  • 米国では生ワクチンに変えていこうという動きがある状況で米国で売られなくなるようなワクチンが日本で導入されようとしている。

つまり米国ではアジュバントが線維肉腫に関係しているため生ワクチンに変えていこうということである。

日本で販売されている猫白血病ワクチンはフィバキシンFeLVとリュウコゲンがあったがフィバキシンは2003年9月にすでに販売中止となっている。
フィバキシンFeLVの添付文書を探したが動物医薬品検査所HPのデーターベースも消されており見ることができなかった。

●リュウコゲンの添付文書より
猫白血病ウィルスp45精製抗原不活化ワクチンで、アジュバントは水酸化アルミニウム、精製サポニン
使用法:1mLずつを9週齢以上の猫の皮下に15~21日間隔で2回注射する。
使用上の注意:不活化ワクチンの同一部位へ反復注射により肉腫の発症率が高まるとの報告があるのでワクチン注射歴のある部位への注射は避けること。

リュウコゲンはフランスのVirbac社が製造したものを大日本住友製薬が販売している。
Virbac社はAntigenics社(AGEN)から猫白血病ワクチンの製造事業を買った会社である。
サポニンを含むアジュバントを開発している会社はAntigenics社とGSK社である。
多くの獣医師は猫白血病ワクチンを切断することができる四肢や尾に接種しているそうだ。
動物実験は短期間で終了するがコンパニオンアニマルへの接種の影響は長期間で見ることができる。
動物の予防接種の現状を知ることは今後ヒトに導入される新しいワクチンについて知ることができると思う。

(薬剤師 小林)