甲状腺がんの多発がますます明白になった、2月7日の福島県の「管理検診」結果発表(NEWS No.462 p01)

福島県は2月7日に「管理検診」の結果を発表しました。

甲状腺がん患者数は、2011年度検診では前回発表と同数の14人、2012年度では前回より6人増の50人、2013年度では前回より9人増の10人の計74人になり、うち34人が手術をされています。津田敏秀岡山大学教授の分析によれば、日本の15-19才の癌罹患率(一年間に新たに診断された癌の比率)と比較して、「発見」から症状出現までの期間を4年として2011年度では約16倍、12年度の二本松市や本宮市ほかの「中通り地域」では31倍にもなります。
今回の特徴は、2013年度の数字が大幅に増えています。その増えた地域では、2011・12年度と比べて、発見率は明らかに少ないことが、これも津田教授によって証明されました。1次検診受診者数に対するがん発見率を比較しますと、いわき市を除く東地区では10万に当たり10.4人です。この率を1としますと、2011・12年度の地域では、2.30-5.95倍(オッズ比)となり、1地域で統計的有意差がでています。

これは、大変意義の大きいデータです。というのも、これまでの「発見率」を比較するデータとしては、1)前述の癌統計の「罹患率」、2)チェルノブイリの「発見率」の様々なデータとの比較で増加を証明してきたのですが、日本人の同様の検診での「発見率」は環境省が実施した3-18才対
象の「発見率」=0の調査しかありませんでした。この調査は検査終了者が4321人と少ない、癌発見を目的としていない、などの問題点がありました。
今回のデータ発表は、まさに同じ検診目的と方法でされた地域どうしの比較ですから、原発に近い地域の方が、遠い地域よりも「発見率」が高いことを証明し、前者の異常な増加が証明されたわけです。

しかし、福島県では原発から最も離れた、「会津地方」のデータは対象者が10365人であること以外、2次検診対象者数さえ全く発表されていません。この数字を発表すると、被ばくの少ない地域での「発見率」がひどく低いことがはっきりするためかとも考えられます。
これは、Jacobらの論文や、鈴木福島医大教授が何度も述べているように、これまでの福島での癌「発見率」を日本の「発見率」の基準値baseline(正常値)として、癌増加をとるに足らないものに見せかけようとする意図と思われます。会津地方のデータを早急に公表するよう求めます。
また、患者の年齢や手術内容なども、被曝による被害の解明や不要な治療から患者を守るためにも公表されるべきです。プライバシーの問題をいうのなら、豚インフルエンザの時は入院や死亡者さえかなり具体的な経過を発表していたことを思えば、プライバシー保護のうえ事実を発表するのは当然と思われます。

(はやし小児科 林)