ドイツでの国際会議 「原発事故がもたらす自然界と人体への影響について」への発表の紹介(NEWS No.462 p02)

医問研の3人の会員がドイツでの、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)・ドイツ支部らが主催する国際会議(3月4日ー3月7日)と、ベラルーシを訪問することになり、その意義については、前月号でお伝えしました。
今回は、3人の発表内容について紹介します。

高松勇さんは、まず福島第一原発の事故後の健康問題として、特に甲状腺がんの多発を紹介します。2月7日の発表を受け、津田岡山大学教授の分析などを基に、今月号1面の紹介内容などをより詳しくしたものです。
また、チェルノブイリ事故後のデータとして、現在の福島の「発見率」はベラルーシのモギリョフ、キエフなどと同等ないし高いことを、医問研ニュースに紹介してきた内容を使って、紹介します。
さらに、I131被ばくの少ない事故後に生まれた子どもたち約6万の検診で癌発見がゼロだったデータなども紹介し、これらの関係者と議論する予定です。

入江紀夫さんは、日本の学会が福島原発事故に当たり、いかにいいかげんなコメント出したのか、それに対する医問研などの取り組みを報告します。具体的には

  1. 日本学術会議は、「100mSv以下の放射線では、受動喫煙や野菜不足によるがんの増加より小さいとされています。」
  2. 日本公衆衛生学会 は、「最大の危険因子は、被ばくへの不安の強さでした。」、
  3. 日本医学放射線学会「100mSv以下の低線量での増加は、広島・長崎の原爆被爆者の長期の追跡調査を持ってしても、影響を確認できない程度である。」
  4. 日本疫学会「3)低線量放射線被ばくの影響  これまでに国内外で行われた疫学調査では、低線量の放射線被ばくでは、放射線によってがんやがん以外の疾患のリスクが増加することを示す明確な証拠は得られていません。」
  5. 日本小児科学会 (略)
  6. 放射線医学総合研究所:100mSv以下は「ガンの過剰発生がみられない」との図を出して紹介します。

また、日本小児科学会に働きかけ実質的な見解の変更を実現させたことなどを報告する予定です。

山本英彦さんは、福島県の「管理検診」結果より、検出された結節の数と、被曝線量の相関があることを発見したこと、発見された甲状腺がんの大きさからして、「潜在がん」とはいえないことを中心に発表します。詳しくは、前号に書いたことです。また、2月7日に発表された検診結果も報告します。
結論として

1)福島の検診で発見された甲状腺結節と環境放射線量との間には量-線量関係が認められる。これは福島甲状腺がんと放射線の相関をも示唆するものであり、「スクリーニング効果」ではないと思われる。
2)福島甲状腺がんの大きさからも「スクリーニング効果説」は疑問である。福島の甲状腺がんの異常増加は福島原発の爆発による放射線被ばくによるものであり、スクリーニングの効果ではない。
3)3群(11.12.13各年度)のがん発見率の統計学的有意差から、スクリーニング効果ではないことがさらに明らかになった

としています。

現地では、ドイツの著名な学者たちや、ECRRの中心人物たちとの交流も予定されているので、多くの成果が期待されます。また、高度に被曝したベラルーシの現在の情報などももたらされると思われます。

次号からは、3人の活躍ぶりが、それぞれから報告されると思います。ご期待下さい。(はやし小児科 林)