くすりのコラム FDAが認可、閉経に伴うほてりの非ホルモン療法に選択的セロトニン再取り込み阻害剤パロキセチン(パキシル)(NEWS No.463 p08)

米国食品医薬品局(FDA)は2013年6月28日に閉経に伴う重篤なほてり(血管運動症状)にパロキセチンを承認しました。パロキセチンは、現在FDAによって承認されたほてりのための唯一の非ホルモン治療になります。日本では2000年に薬価収載され、うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害に保険適応があります。
しかし、この薬は問題が多く、薬を渡すときに薬剤師は「家族等に自殺念慮や自殺企図、興奮、攻撃性、易刺激性等の行動の変化及び基礎疾患悪化があらわれるリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。」が求められています。
しかもパロキセチンは中止により禁断症状のような症状が現れ、止めることも難しく注意が必要です。
しかし添付文書では「これらの症状は薬物依存によるものではないと考えられている。」とあります。
私は数年前に勤めていた薬局では毎日沢山のパキシルの処方箋を受けていました。中にはパキシル新規処方からから数ヶ月後に、社会保険事務局から患者さんの家族(遺族)からレセプト開示請求の通知がきたことがありました。薬局ではどのように亡くなったのか、また留置所に入った患者さんのために警察官が代理で来局することがあっても何があったのか、薬局では知らされることはありません。また本人の調子が悪く自殺企図の心配があり入院を家族が希望してもベットの空きがないと断られるケースが多々ありました。中にはどうしても困ったら救急車を呼ぶよう医師に言われたと涙ながらに話す家族もいました。結局、その患者さんは刃物を振り回して家が火事になってから入院になりました。その時添付文書にあるようなリスク説明によって問題となる行動を回避できるものではないと感じました。
日本では完全失業率とともに1998年ごろから自殺率が上昇しました。パキシル処方数とともに自殺率も上昇したことでグラクソ・スミスクラインは2007年10月に「当社が販売する抗うつ薬の安全性に関する見解」をだしました。日本うつ病学会は2012年7月に、大うつ病性障害に関する治療ガイドラインの中で重症度別に治療法を提示し、軽症うつ病の診療では傾聴・共感の姿勢が重要であり、安易な薬物療法は避けるべきとしました。
ガイドラインが出されてから薬局で受けるパキシルの新規処方数はかなり減ってきました。
ところが婦人科から更年期障害に伴う抑うつ症状にパキシルを処方されることが最近あるという話を聞くようになってきました。今まで蓄積されたパキシル使用経験はホットフラシュ処方時に参考にしたり、メーカーが注意喚起することはないでしょう。FDAのパキシル適応拡大は更年期症状に悩む女性への安易な処方を増やす恐れがあります。メーカーは精神科、心療内科から婦人科へ処方ターゲットを変えようとしているのかもしれません。
薬剤師 小林

米国食品医薬品局(FDA)は2013年6月28日に閉経に伴う重篤なほてり(血管運動症状)にパロキセチンを承認しました。パロキセチンは、現在FDAによって承認されたほてりのための唯一の非ホルモン治療になります。日本では2000年に薬価収載され、うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害に保険適応があります。
しかし、この薬は問題が多く、薬を渡すときに薬剤師は「家族等に自殺念慮や自殺企図、興奮、攻撃性、易刺激性等の行動の変化及び基礎疾患悪化があらわれるリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。」が求められています。しかもパロキセチンは中止により禁断症状のような症状が現れ、止めることも難しく注意が必要です。しかし添付文書では「これらの症状は薬物依存によるものではないと考えられている。」とあります。
私は数年前に勤めていた薬局では毎日沢山のパキシルの処方箋を受けていました。中にはパキシル新規処方からから数ヶ月後に、社会保険事務局から患者さんの家族(遺族)からレセプト開示請求の通知がきたことがありました。薬局ではどのように亡くなったのか、また留置所に入った患者さんのために警察官が代理で来局することがあっても何があったのか、薬局では知らされることはありません。また本人の調子が悪く自殺企図の心配があり入院を家族が希望してもベットの空きがないと断られるケースが多々ありました。中にはどうしても困ったら救急車を呼ぶよう医師に言われたと涙ながらに話す家族もいました。結局、その患者さんは刃物を振り回して家が火事になってから入院になりました。その時添付文書にあるようなリスク説明によって問題となる行動を回避できるものではないと感じました。
日本では完全失業率とともに1998年ごろから自殺率が上昇しました。パキシル処方数とともに自殺率も上昇したことでグラクソ・スミスクラインは2007年10月に「当社が販売する抗うつ薬の安全性に関する見解」をだしました。日本うつ病学会は2012年7月に、大うつ病性障害に関する治療ガイドラインの中で重症度別に治療法を提示し、軽症うつ病の診療では傾聴・共感の姿勢が重要であり、安易な薬物療法は避けるべきとしました。ガイドラインが出されてから薬局で受けるパキシルの新規処方数はかなり減ってきました。
ところが婦人科から更年期障害に伴う抑うつ症状にパキシルを処方されることが最近あるという話を聞くようになってきました。今まで蓄積されたパキシル使用経験はホットフラシュ処方時に参考にしたり、メーカーが注意喚起することはないでしょう。FDAのパキシル適応拡大は更年期症状に悩む女性への安易な処方を増やす恐れがあります。メーカーは精神科、心療内科から婦人科へ処方ターゲットを変えようとしているのかもしれません。
薬剤師 小林