保団連 第44回夏季セミナ-で講演しました(NEWS No.467 p02)

7月6日、東京の都市センタ-ホテルで開催された保団連セミナ-で、分科会-講座2「放射線被ばく問題」の中で“福島甲状腺がんアウトブレイク”と題して講演をさせていただきました。当日は、全国から集まった数十名の医師、歯科医の皆様が熱心に聞いてくださいました。

福島甲状腺がんアウトブレイクでは、福島の甲状腺がんの多発は、国立がん研究センター発表の年齢・性別の甲状腺がん発生率比で15倍から30倍の多発(全国年間発生率15-19歳に対する比率(平均有病期間-4年)。これは、通常あり得ない異常な高さである。県内での甲状腺がんの発見率の比較(有病オッズ比)では、最大11倍の地域差が存在する。もはや甲状腺がんの多発をスクリ-ニング効果では説明がつかない。チェルノブイリ検診発見率と比較すると、福島県発見率(対10万人)は2011年度で38、2012年度で44であった。これは、チェルノブイリの一部地域に匹敵するほどの高さである。

甲状腺がん多発が意味することは、残念なことであるが、初期被曝が相当量存在したことを示す事実であり、今後がんに限らず様々な健康障害が生じることを示している。また、地域的には福島県に限定されず、首都圏をはじめ広範な地域で生じると考えられること。
被ばく軽減策=避難、保養、食の安全確保が必要であり、放射能健康診断、科学的な治療法、補償などの援助体制が重要である。

ドイツ国際会議「原発事故がもたらす自然界と人体への影響について」報告では、低線量放射線の教育とネットワ-クの形成に向けた国際的な共同の取り組みが開始されたこと。甲状腺がんのアウトブレイクとして発生している事実を世界に向けて報告し、会場では、新鮮な驚き、「素晴らしい発表」という共感をもって受け止められ、会議の重要報告として位置づけられたことを報告しました。
講演に対する質問やコメントが活発に出されました。

「甲状腺がんは、小さいものでは経過観察で増悪しないものをよく見ているが、発見次第外科治療する治療方針はどう思うか?」と質問していただきました。低リスクの甲状腺乳頭がんでは、全例手術ではなく、外科以外の治療法や経過観察等の治療選択が存在し、福島県での治療方針の検証が必要、と回答しました。

(たかまつこどもクリニック 高松)