くすりのコラム スイッチOTC「エパデールT」「エパアルテ」(NEWS No.468 p08)

エパデールが処方箋なしで販売されることになりました。
エパデールはイワシの脂成分に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)の純度を高め高脂血症・閉塞性動脈硬化症治療剤として医療用医薬品として認可されています。その「エパデール」を一般用医薬品として販売できるようになりました。
1日3回服用、1箱2週間分で5800円します。エパアルテ販売会社は水産加工会社の系列です。OTC化への道のりは長く、生活習慣病治療薬がOTC化されるのはなじまないとして使用は医療機関受診者に限るべきだなどの意見が日本医師会から出され、前進しないOTC化に薬剤師の間からは反発の声があがっていました。その声には医師会に対して何も言えない日本薬剤師会への苛立もみられました。

私の勤めるドラッグストア系列の調剤薬局でもエパデールT販売認定薬剤師になるための講義を受けるようにという案内がきました。この薬を売るためにはメーカー主催の講義を聞いて販売認定薬剤師になる必要があります。認定されれば「エパデールT販売認定薬剤師」というバッチをつけて販売するというのです。適正使用調査のため、調査期間中は調査実施店でしか発売されません。薬剤師が正しく服用対象者に販売しているのか、服用指導や受診勧奨等を適切に行っているかが調査されます。「エパデールT」を販売する大正製薬では全国の薬局のうち約1500店舗、「エパアルテ」を販売する日水製薬では約150店舗での限定発売となりました。ただの第1類医薬品を売るために「登録」ではなく「販売認定薬剤師」になることも理解に苦しみます。

大正製薬のエパデールT取扱店はイオン、キリン堂、コープ、コクミン、スギ、セガミ、ツルハ、マツキヨといった大型ドラッグストアです。多くの薬剤師を抱えるドラッグストアが社命で「販売認定薬剤師」のための講義を受講させればそんな安上がりな販売促進活動はありません。市販薬は、痛み(グルコサミン)や美容(シミ、薄毛)、疲れのための滋養強壮といった自覚症状がなければ売れません。全く症状がない「健康診断等で指摘された境界領域の中性脂肪値を改善させる薬」を売るには販売員の病気への恐怖感を植え付けるセールストークが鍵になるでしょう。このような高額商品は利益率もよくドラッグストアとしては売り上げを伸ばしたい商品といえます。

8月にJPX日経インデックス400構成銘柄入れ替えが発表されました。そこにイオン、ツルハHD、スギHD マツキヨHDが入っています。ココカラは今回はずれてしまいました。銘柄入りを果たすため減益にもかかわらず高配当を維持している会社もあります。日本の政治は潤沢な資金のある業界に有利に動いてきました、医師会が影響を持ってきたのもこのせいです。日医対日薬がくだらない縄張り争いをしている間に外資医療保険会社やドラッグストアに主導権を取られてしまう日も近いのかもしれません。「国民皆保険」はどうなっていくのでしょう?

薬剤師 小林