抗インフルエンザ薬についての要望書(NEWS No.468 p07)

コクランのタミフル・リレンザに関する、最終的なレビューが4月にでましたが、これまで医問研としてはなにもしていないので、以下のような要望書を、日本小児科学会と日本感染症学会に送付する必要があると思います。以下の内容で、臨床懇話会・薬理研で検討しています。

「貴学会では、インフルエンザ治療指針として、タミフル・リレンザやその他の抗インフルエンザ薬を推奨されています。
ところで、今年4月にコクラン共同計画は、タミフル・リレンザに関するシステマティックレビューで概略以下のような結論を出しています。

<効果>
1、入院について
タミフル:大人で減らす効果がない。
子どもでデータ不足。
リレンザ:データが存在しない。
2、合併症
タミフル:減らす効果がない。
リレンザ:大人で減らす効果ほとんどない。
子どもでも減らす証拠が不十分。
3、肺炎:タミフルもリレンザも減らすとの信頼できる証拠がない。
4、症状の期間短縮
タミフル、大人で平均16.8時間短縮、
子どもで平均29時間短縮。ぜんそく児での効果なし。
リレンザ:大人で0.6日短縮。
子どもで効果なし。
<副作用>
タミフル:大人で嘔気、嘔吐が増加。
子どもで嘔吐が増加。抗体の産生が低下。
リレンザ:強い副作用不明。

これは、2009年12月に出した結論を、さらに確実なものとするために、ロシュ社(タミフル)、GSK社(リレンザ)からの臨床試験に関する全ての元データの提出を得て、また欧州の規制当局へ出されたデータを得た上で、実に16万ページ以上のデータを分析したもっとも詳しいレビューです。
したがって、現在の世界的にもっとも明確な結論がこのレビューの結論になります。すでに欧州では備蓄について検討され、イギリスでは今後備蓄の抗インフルエンザ薬を購入しないことを決定したとされています。
科学に基づく医療を追求する、貴学会としては、
1)備蓄の科学的根拠がないので、備蓄の中止を国・自治体に申し入れる。
2)インフルエンザ治療に関しては、肺炎などの合併症を防ぐ根拠がないこと、タミフルもリレンザも発熱を短縮するだけであることを明記する。

また、日本独自に開発されている、イナビルやラピアクタに関しての臨床に関する元データの開示を求めて、
1)合併症に対する効果があるかどうか
2)どれほど発熱をはじめとする症状を軽減できるのかをレビューすることを求めます。

はやし小児科 林

<資料:レビューの本文は以下>

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD008965.pub4/abstract

Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children
Tom Jefferson1,*, Mark A Jones2, Peter Doshi3, Chris B Del Mar4, Rokuro Hama5, Matthew J Thompson6, Elizabeth A Spencer7, Igho J Onakpoya8, Kamal R Mahtani8, David Nunan8, Jeremy Howick9, Carl J Heneghan8