避難者子ども健康相談会きょうとが開催されました(NEWS No.471 p05)

11月16日(日)に京都文教大学の施設をお借りして、避難者子ども健康相談会きょうとが開催されました。主催は実行委員会で、福島第一原発事故での福島県および関東からの避難者の子どもを対象に年2回開催されているものです。午前中に医師による健康相談会、午後からはセミナーというスケジュールでした。

健康相談会には6家族11名の相談がありました。今回も新規の相談者が4家族5名ありました。京滋の有志小児科医の先生方の協力を得て、医問研の医師も参加させていただきました。まだまだ健康相談に踏み切れていない避難者がおられること、経過が長期に及ぶことが予想され、相談会活動も継続する意義が大きいことを感じました。昼にはランチョンカンファレンスを行い、相談会に参加されている医師の間での情報交換を行いました。

午後からは、京都文教大学と立命館大学の学生さんから被災者へのボランティアや避難者インタビューの映像化の活動等が報告されました。事故後3年半以上経過して、被災の事実や避難者の問題が周囲に伝わりにくくなっていること、その中でも関わり続けたいという率直な思いや悩みも交えた報告があり、参加者の共感を呼びました。
次いで、入江さんが「福島県小児甲状腺がん103例の意味すること」をテーマに講演されました。福島県の甲状腺がん検診発見率はチェルノブイリ原発事故に匹敵する多発です。福島県の甲状腺がん手術実施率は全国標準と考えられるがんセンターの実施率と比較しても極めて高く、悪性度の高いものが半数以上です。甲状腺がんの多発状況は、手術症例が悪精度の高い臨床ガンであることから、スクリーニング効果ではなく、発生率の地域差や土壌汚染との相関から、甲状腺ガンの発症は放射能汚染によると強く示唆され、今後は甲状腺以外のがんやガン以外の疾患への調査と対策が緊急の課題であること、妊婦や若年者の避難を含む放射線防護対策が緊急の課題であることが提示されました。

京都相談会は今回で4回目ですが、明るく開放的な会場で、避難者の方々を軸に、学生さんなどの大勢の協力で継続されています。終了後のミーティングでは、京都文教大学の先生が、大学に対して10年間は付き合う事業だとして協力を求めると述べられ、心強く感じました。相談会に関わっている医師の間での議論のもち方や、医師以外の医療従事者などの協力を求めることなど、長期に継続する体制も整えていく必要があると感じました。

いわくら病院 梅田