くすりのコラム ネオシーダーは医薬品かタバコか?(NEWS No.471 p08)

Photo by Mac Vincente

「先月の臨床懇話会でアクトスについて医問研ニュースで取り上げないかと話がありました。
「えー発がん性ですか?」と無意識に言った自分に驚いた。
薬だけでなく原発、環境、労災どの問題でも出来る限り、厚生労働省は発がん性を認めないという態度に前からうんざりしていたのです。発がん性物質が入っていると問題になってもまともな規制がされていない「ネオシーダー」について今年の動きをみてみました。

商品名ネオシーダーは(株)アンターク本舗が製造販売している 一般用医薬品で指定第2類医薬品鎮咳去痰薬です。タバコは1箱400円前後ですがタバコではないネオシーダーは1箱284円で販売されています。効能にはタバコのように吸煙し咳を鎮め痰を出しやすくする薬と書かれています。成分 (1本中) に塩化アンモニウム0.003g安息香酸 0.006gカンゾウエキス、ハッカ油 などが含まれ喫煙習慣のない人や未成年者は使用できないと書かれています。

今年1月の日衛誌(Jpn. J. Hyg.),69,31–38(2014)「薬用吸煙剤ネオシーダーの葉中及び主流煙中の有害化学成分と変異原活性の測定」の論文発表を受けて日本禁煙学会から2月に「第2類医薬品「ネオシーダー」の製造販売中止および健康被害調査の緊急要請」が出されました。その内容は国際がん研究機関(IARC)の発がん性リスクグループ1に分類される物質が市販医薬品から検出されることは前代未聞としたうえで、長年にわたり消費されていることから健康被害がすでに発生している可能性や受動喫煙者への健康被害の可能性も指摘しています。ネオシーダーにニコチンやタールが含まれていること、依存者がいることは2002、2007年に報告され、文書開示請求が行われたが国は成分について黒塗りの文書をだしているとあります。今回発表された論文ではタバコ製品にしか含まれないはずのタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)がネオシーダーから検出されたこと、つまりたばこ事業法に抵触している可能性からも不開示にしている使用原料の開示を要求しています。

ネオシーダーのニコチン量がわずかだから大丈夫ということはありません。
「代償性補償喫煙行動」と言って低ニコチンタバコ喫煙者は高ニコチンタバコ喫煙者と同量のニコチンを吸収しようと吸煙量が増加してしまいます。また「ライト」タバコはフィルター先の通気孔から空気を取り入れる作りにすることでスモーキングマシンを用いた分析結果を低ニコチン・タールにしてしまいます。しかしヒトが実際に喫煙する場合は唇や指で通気孔をふさいでしまうため表示より濃い煙を吸ってしまうのです。
論文ではネオシーダーの販売当初には無かった通気孔がいつからか採用さていると指摘しています。通気孔や吸煙行動による有害物質の曝露変動も問題としています。

販売数を上げるための「依存」を作り出す工作がなかったのかと思います。タバコを医薬品として売っているものですら規制ができない厚生労働省は信じられません。
タバコ管轄の財務省もどうするつもりでしょうか?

薬剤師 小林