環境省専門家委員会の中間報告批判(NEWS No.472 p01)

環境省は福島に関する「専門家会議」の「中間取りまとめ」を発表しました。これまでの福島県の健康調査で発見された甲状腺がんの異常多発をいかにごまかすか、という方向で「取りまとめ」たようです。そのためか非常に混乱した内容になっています。
被曝線量の推定や、障害の認定、甲状腺がん(多発)と原発事故との関連の否定など、ひどい内容です。また、当初主張していた、福島での検診を止めてコホート研究に変更することを撤回し、福島の検診は「適切」としてしまいました。
しかし、専門家会議が、福島の子どもを検診の不利益から守るかのような理屈をつけて、検診をやめさせようとしていました。今回は、それが本当に科学的な観点からなされたのかを検討しました。
一般的にさまざまな病因を調査する場合、その厳密性からランク付けられるいくつかの研究方法に分けられます。福島の検診は一定期間に多くの人を検査し、調査した人の中で病気などを発見する「横断的調査」です。この調査で多くの甲状腺がんが発見されましたが、その発見率と被曝との関連を証明するには、地域別やこれまでの他の集団のデータと比べなければなりません。それに対して、コホート研究では被曝線量の違う地域から一定の人を選んで、それぞれの地域での甲状腺がん発見率を追跡してゆき、発見率を比較しますので、横断的研究より被曝との関連性を証明しやすいのです。
しかし、研究形式のランクが上だからと言って、研究結果がより科学的だとは限りません。ランダム化比較試験という最高ランクの試験方法で、日本の効かない薬が「効く」として認可されてきました。アウトカムに「全般改善度」という主観的尺度を使ってごまかしたからです。タミフルが入院や重症化を防ぐとだましたのもこの研究方法です。
福島の検診結果を見てみますと、この横断的調査からでも、日本のがん登録との比較、チェルノブイリの放射性ヨウ素汚染の強かった地域、同汚染のほとんど無かった集団との比較で、福島での甲状腺がん発見率の異常な高さは明白です。
この事実や甲状腺がん異常多発と原発事故との関連を認めない専門家会議が、被曝と甲状腺がんの関連が明らかになるような研究を認めるはずがありません。
しかも、会議は福島でのその他の健康状態を、既存の「検診」で見てゆけばよいとしています。例えば、乳がん検診の有害無益さはどんどん証明されています。そのような検診を勧めながら、他方で福島での検診の問題点を指摘するのは何か別の狙いがあると考えるべきです。
もちろん現在のような、秘密主義で患者のためになるのかどうか不明な現在の検診は、本当に受診する人に利益をもたらすものに代えるべきものです。