福島の甲状腺がん増加 2巡目の検診も甲状腺がん発見率も高い(NEWS No.474 p02)

2月12日、福島県は県民健康調査の集計データ(12月31日現在)を発表しました。
前回12月の発表でも同様ですが、これまで発表されてきた「先行検査」に加えて「本格検査」が発表され、前回4人、今回8人のがんが発見されていることが特徴です。
「先行検査」は約29万9千人の検診で109人の甲状腺がんが発見され、うち86人がすでに手術を受けています。これが1回目の検診になるわけです。
「本格検査」では8人が発見され、1人が手術を受けています。本格検査は2014年4月から始められたものです。対象は先行検査でがんがないとされた人がほとんどで、その人たちにとっては2回目の検診になります。他に、事故の1年後までに生まれた子どもも対象に追加されています。
この先行検査と本格検査の関係については、次のことに注目しなければならないと思います。本格検査は先行検査によって発見されたがん患者を除いていることです。ですから、先行検査が終わってから発生したものか大きくなったものであると考えられます。しかし、それだけではない場合があります。なぜなら検診結果には偽陽性と偽陰性が必ずつきものです。偽陰性=もれだった場合も考えなければなりません。特に11年度は検診の始まった時で、慣れないため、もれの可能性も否定できません。
ただ、先行検査では「A2判定」(2次検査をする基準より直径が小)から3人が、それらの異常がなかったか、または見過ごされた「A1判定」の人から5人が発見されています。ですから、先行検査後にがんが発生ないし増大した可能性は高いように思いますが、まだはっきりしません。
本格検査の頻度を考える際、発表は先行検査では2011年と2012年度を合わせた集計をしています。その中で、2011年度は本格検査が進み対象者のうち64%の調査が終わり、6人のがんが発見されています。このままの比率で発見されれば10万人あたり32人のがんが増えたことになり、これだけでも明らかな多発です。
より明白なことは、先行検査と本格検査を合わせて計117人ががんであり、うち87人がすでに手術されていることです。これらの数値は、全国がん統計やチェルノブイリでの検診結果との比較で明らかな異常多発を示しています。しかも、本格検査では、今後もますますがんの発見が増えていくことが予想されます。
福島県・環境省は、先行検査の発見率が福島の子どもの「基準値」=正常値であり事故とは関係ない、としています。本格検査の結果だけをがんの増加を示すものとするのも科学的な立場とはいえません。
下表に今回発表の概略を示します。
はやし小児科 林