福島県で周産期死亡が増加(NEWS No.474 p04)

WHOが定めた「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂」(ICD-10)では、周産期を「妊娠満22週(154日)から出生後満7日未満」と定義している。日本では従来「妊娠満28週以後、早期新生児期(出生後満7日未満)」としていたが、平成7年からICD-10を採用している。これに伴い周産期死亡も「妊娠満22週以後の死産に早期新生児死亡を加えたもの」と改められた。一般的に死産には人工死産も含められるが、妊娠22週以後は、帝王切開によって生存可能なため、原則的にこの時期の死産は自然死産である。

周産期死亡率は出産数(出生数+22週以後の死産数)1000に占める22週以後の死産数と早期新生児死亡数を加えたもので表わされる。このような指標が使われるのは、社会によっては早期新生児死亡が死産として処理される傾向があるためである。そして妊婦及び胎児の健康状態や異常分娩の発生の指標としてよく利用される。日本では、周産期医療の向上や風疹等感染症の減少などで順調な減少傾向にある。
今回福島原発事故の影響を検討するため、空間放射線量の高い地域を含む岩手、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬の7県の周産期死亡率を人口動態調査の資料から検討した。

7県については、7県全体の周産期死亡数を7県全体の出産数で除した。2011年までの回帰直線から期待される2012年の値は3.9(95%信頼区間3.49?4.31)、013年は3.71(95%信頼区間3.31?4.11)であった。観察された近7県の周産期死亡率は2012年に4.60、2013年に4.33で、期待される値の95%上限を上回っていた。また、2012年に上昇し、2013年にかけて従来の減少傾向と並行に推移していた。
対照群として、青森、秋田、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、滋賀まで年間出産数の計が7県の計と同数程度になるように選択した。周産期死亡率の増加傾向は認めなかった。

東京、千葉、埼玉、神奈川は人口規模が大きいこと、都市部であること、部分的にhot spotを含んでいることから対照群から除外したが、4都県でも周産期死亡の増加傾向は認めなかった。


2012年と2013年の周産期死亡率が福島近7県で有意な上昇を見たため、自然死産率(在胎週数12週以後の自然死産の出産1000に占める割合)の推移についても検討してみた。

全国で福島のみが2012年と2013年とも有意に上昇していた。
以上のことより、原発事故及び震災、避難といった一連の事態が胎児に影響を与えていることが推測された。

保健所 森