浮雲保健師ぶ〜やんの呟き 「情(じょう)…とは?」〜の巻(NEWS No.474 p06)

「同情するなら金をくれ?」

ある日 私の顔を見るなり 昔流行ったフレーズを呟くママ。
乳児を抱っこ紐に抱え 右手には 2歳のお兄ちゃんA君の小さな手を掴んだまま 立ち尽くしている。
「久しぶり!どうしたん?何事?」
会うなり 唐突に話し始められるのには慣れている。 でも小さな子どもたちが居るので 急いで対応。 慌てず ゆっくり さり気なく…乳児とAくんを遊ばせながら、荷物をおいてもらう。
少し落ち着いたところで もう一度話を聞き直すと?
Aくんは 乳児の頃から関わっていて保育園に行った愛想もよく、可愛い元気な男の子。ところが、ママが第二子を妊娠した頃から、心配事が積み重なってきた。
・保育園に行きたがらない・物を投げる
・奇声を発する…等など
はじめは『ママが妊娠しているから不安定に?』『保育園に行き始めたから?』などと考えて気にしないようにしていた。しかし、保育園で他の子とのトラブルが勃発し担任との懇談で
「外遊びとか 給食で 物を投げたりするのが止められなくて…お家の事情や 赤ちゃんの世話も大変だと思うけど。少し情緒不安定と言うか…寂しいのかな?」
と、その言葉で ママは
『私の愛情不足ってことか?』
という思いが込み上げ その後気分は、どん底に落ち込んでしまった。
結局 保育園は 公的機関の相談に行ってみることを勧めていた様子。
ママ自身も十分気にしていたし 親戚近所からも指摘されていたことなので やや心配な子とは思っていた。
しかし それなりに頑張っているのに 母の受け止め不足=愛情不足(注:ママの解釈)と言われたことが ショックだった。

同じようなケースが続く
3歳のBくんは アルファベットが大好き! ママはBくんのために下の子を姑に預け 英語教室の体験学習に親子で参加。いざ始まると 同年代の他の子は ママの膝から離れず座っていたが、Bくんは一人ウロウロ。アメリカ人の先生に臆すること無く 部屋のおもちゃでABCを勝手に楽しんでいたとはいえ、授業は全く受けられず。先生と一緒に単語のキャッチボールを出来ていた子が1歳児。同席していた他の子のママから冷たい目で見られた…など、ショックを受ける。
帰宅して姑に話したら「ママが もっと情をかけてやり?」と言われてしまった。

もう一人 第2子を出産したばかりのママ。上の子は小学校に入ったとこで、仕事との両立がいろいろと忙しい妊婦生活を送っていた。無事出産し元気に退院した後で 先天的な病気が発覚。手術で軽快するであろうケース。しかし、ママは落ち込み『妊娠中、忙しすぎたせい?』と自分を責め立てる。そこへ「ママの愛情一杯注いであげたら大丈夫だからね?」などという言葉で慰めようとする病院職員に遭遇。
「言われてる意味がわからない」と訴えに来たママ。

子どもの心配相談とともに『愛情って?』そもそも『情って?』『どれ位 情をかければいいの?』などなど、ママ同士で盛り上がり 発散して傷ついた心も癒していけるだろうか?
慰めているつもりの世間の言葉で より一層 心が傷付いているママたち。
「慰めてくれんでもいい!同情するなら金をくれって叫びたい。」と Aくんママ。
誰のせいでもないよ。
一緒に考えていこうね!

川崎恵子