くすりのコラム レビー小体型認知症 アリセプト3mgは有効?ロリ除菌は万人に有効か?(NEWS No.474 p06)

2014年9月にアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト錠」(ドネペジル塩酸塩)が、日本で初めてレビー小体型認知症(DLB)に関する効能・効果の承認を取得しました。この効能追加申請が出された時ついにドネペジル3mg/日が適応外ではなく正式に使える量になるのかと思いましたが、やはり3mg/日が適応量になることはありませんでした。
[編集部注:DLBは、認知症の約20%を占め、アルツハイマー病(AD)とパーキンソン病の特徴を併せ持つ疾患。3徴は、認知機能の変動、繰り返し出現する幻視、パーキンソン症状。アリセプトなどの抗コリンエステラーゼ阻害剤が認知機能の変動や幻視に有効な場合があるとされる]

この審査が行われた議事録にはこのようにあります。●DLBへの有効性が証明されたとは言えない。●画期的な薬ではない、ほかにないので、何もないよりはましな程度…有効性について証明されたものではないという情報提供はしっかりとしなければいけない。●最初に企業が申請してきたときの用法・用量は3mgまで減量できるということになっていたが、臨床試験成績で3mgまで減量した場合の有効性は明確になっていない。長期試験の中で5mgまで減らした結果はあるので5mgまで減量できるとした。

DLBの多くは3mg/日で処方されています。しかし日本神経学会の認知症ガイドライン2010にはDLBに3mgで効果があるとは書かれていません。アリセプト添付文書・用法用量注意には「3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1?2週間を超えて使用しないこと。」とあります。

書店には多くの介護関係書籍が並んでいます。ある介護ライターが書いた本をめくると河野和彦医師が経験的に得た認知症治療法やその解釈をまとめた「コウノメソッド」の賛美が書かれていました。インターネットで「コウノメソッド」について調べると、独自の処方解釈が漢方薬の解説書のように書かれています。そこには引用文献の記載もなく、「認知症に関わりたいと思う医師は、コウノメソッドのみを信じればよい。コウノメソッドは数万の患者が教えてきたバイブルである。自分の方法にメソッドを加えるのではなく、完璧にメソッドどおりに処方すること。」とありこの会の入退会に厳しい規制のあることも明記されていました。

同様に公に正しい治療法と認められないまま医療現場に広がっていった治療がありました。鳥谷部 俊一医師が発案した褥瘡に対するラップ療法です。被医療用材料を用いた治療に対する賛否に対し厚生労働省は沈黙を続け、現場の医師の責任で在宅医療現場で広がっていきました。褥瘡の治療効果判定は認知症と違い誰の目から見ても難しいものではありません。「コウノメソッド」のような独自の処方手技を宗教のように信じてしまった医師は自分でこの認知症手技の効果判定を自分で正しく行うことができるのでしょうか?多くの適応外アリセプト3mg/日が医師の責任で処方されています。ラップと違いアリセプト錠が保険で請求される以上アリセプト3mg/日処方の効果判定が公正に行われなければいけません。

薬剤師 小林