第1回「低線量被ばくを考えるセミナ-」が松崎道幸氏を招き開催される(NEWS No.476 p03)

4月4日(土)に大阪小児科学会地域医療委員会が主催をして、大阪市大医学部学舎にて開催されました。小児科学会会員や保健所の方や市民の多くの参加がありました。
講師は、松崎道幸氏(道北勤医協・旭川北医院院長)でした。氏は、低線量放射線被ばくのリスクや健康被害に大変詳しい方です。

まずは、福島の健康被害の現状では、福島事故では周産期死亡、乳児死亡が増えていた可能性があると言及。そして、原発事故による子どもたちへの影響について、福島に住み続けることによってどれほどの健康影響が起きるかを語られました。福島の線量の高い地域に一生住み続けた時、様々な健康障害が生じてくることを覚悟せねばならず、具体的に、小児白血病2~5倍増、成人がん100人中数人超過罹患、心臓病倍増の危険性を、文献的検討から指摘されました。
その背景には、100mSv以下の被ばくでがんのリスク増加が有意に示された数多くの研究調査結果を示されました。日本の原発労働者20万人追跡調査では、10mSvでがん死が3%増加。オ-ストラリアのCT被ばくで子ども68万人追跡調査では、4.5mSvで小児がん20%増加。イギリスで自然放射線被曝の子ども6万4千人追跡調査では、5mSvで白血病が12%増加、などの多数の研究結果を例示されました。そして、最近の文献検討からは、数mSvの被ばくでも、がんリスクが有意に増加していると結論付けられました。

一方、放影研原爆データは、被ばくの影響が小さく見積もられている。さらに、外部被ばくの健康影響を数分の一から数十分の一に過小評価している。最新のデータに基づき放射線防護対策を根本から見直す必要性に言及されました。また、放射線被ばくの影響は長期間に亘り検討すると、様々な健康障害が認められてくるのが事実であり、将来もっと重大な被害の全貌が出てくる危険性を認識すべきだとも指摘されました。
食べ物・飲み物の放射性物質による内部被ばくの健康影響は、人体(実験)データがなく、たくさんの仮定に基づいて計算されたものであり、食品のベクレル基準には健康を守ることのできる基準かどうかは証明されていない。したがって、3・11前に実際に食べていた食品の放射線レベルを越えないことを基準とすべきである。

除染に関しては、放射性沈殿物は山から平地に移動し、除染した地域を再び汚染するために、除染効果は減らされ効果は期待できない。
最後に、1)追加被ばくをさせない(移住・避難・保養+原発再稼働反対)、2)最新のデータに基づき放射線防護対策を根本から見直す、3)健康状態の追跡と適切な治療(甲状腺検診をはじめとして)、4)情報をしっかり理解した上で、今後の生活の場を自主的に選ぶことを保障できる経済的裏付けを整える、とまとめられました。
低線量被ばくの危険性の事実を具体的に広範多岐にわたり確認し、「100mSv安全論」に負けない確信が持てる内容でした。

このセミナ-は、「低線量放射線被ばくのリスクに関して」議論を深めたいと考え企画されています。講師には低線量被ばくの健康リスクや原発の安全性を検討する第一線の医学者、科学者をお招きし、今後も、会員の関心を広げ、理解を深めることを目的に開催されます。第2回セミナ-にも注目ください。

たかまつこどもクリニック 高松