医療情勢 国保の国庫負担を健保や共済に肩代わりさせ、都道府県を医療費抑制の推進役にさせる医療保険制度改革関連法案(NEWS No.476 p05)

年間3000億円を超す赤字が続く国民健康保険(国保)の財政基盤を強化すると称し、2018年度から運営主体を市町村から都道府県に移すことを柱とした医療保険制度改革関連法案が、4月28日衆議院本会議で可決され、今国会で成立する見込みだ。国保に新たに約3400億円を投じ、このうち約1700億円を消費増税の増収分、残る約1700億円を実質的に大企業中心の健保と公務員らの共済組合で負担する。
健保連によると、健保(247組合)の15年度予算は8割が赤字で、2割は保険料の引き上げに踏み切る。厚労省試算では、17年度の健保連全体の負担増は約1500億円に上り、約1400組合中約900組合で負担増となる。一方、中小企業中心の協会けんぽは支払いが約2400億円軽減されるが、政府はその分、協会けんぽへの国庫補助を削り、約1700億円を国保に回す。健保連は「健保による国庫負担の肩代わりだ」と強く反発している。
国保の財政運営を市町村から都道府県に移管すると、都道府県は、年度ごとに市町村から国民健康保険事業費納付金を徴収し、市町村に対し国民健康保険給付費交付金を交付することになる。都道府県が、給付費等の見込みを立て、市町村ごとに納付金の額を決定し、さらに市町村の保険料の決定の際目安となる「標準保険料率」を示すとされている。現在、多くの市町村は一般会計から繰入れを行い保険料率上昇を防ぐために努力しているが、「標準保険料率」の設定がこうした努力を否定し、保険料の値上げにつながるおそれがある。
本法案には、医療費「適正化」計画の見直しがあげられた。都道府県は、医療・介護総合法に規定された地域医療構想と整合性が図られる医療費「適正化」計画を定め、医療に要する費用の目標を定めなければならない。より根本的な医療保険制度改悪・医療費抑制の恒久的な仕組みづくりになる。国の責任は棚上げされ、地方自治体と住民にいのちと保険財政の責任が押しつけられる。都道府県は医療・介護の抑制を競い合わされる。もともと医師不足による病棟閉鎖状態など、医療資源が不足している現状が追認され、医療の過疎化や医師不足を固定化することにはなりかねない。全国知事会は、現行の計画で「医療費の見通し」としているものを「目標」とすることに強い懸念を表明している。
紹介状なしで大病院を受診する場合等の定額負担の導入、入院時食事療養費の1食260円から460円への引き上げ、後期高齢者医療制度の保険料の特例軽減の廃止など、負担増で医療にアクセスできない人を増やすことも打ち出されている。
国保の財政基盤立て直しのためには、国庫負担率を引き上げて国保の基盤を安定させるべきだ。国保の財政悪化は、国庫負担削減に加えて、高齢者や不安定雇用による低所得者の加入増加があり、賃金保障や雇用安定化などの抜本的案改革こそ求められる。都道府県や健保、実質的には労働者、国民に負担をしつける医療保険制度改革法案は撤回すべきだ。

いわくら病院 梅田