文献レビュー ペクチンは唯一の「二重目隠しランダム化試験」でセシウムを低下(NEWS No.478 p04)

前回は、PubMed検索の結果で、人間を対象とした臨床試験としてランダム化比較試験RCT+二重目隠し法が1件、二重目隠し法が1件、他の比較試験が2件見つかったことを報告しました。

前回に、臨床症状をアウトカムとしたバンダジェフスカヤの論文を紹介しました。ペクチン投与前後の比較で、中等度汚染者群(平均38Bq/Kg)のグループでは前後で39%の減少、高度汚染者(平均122Bq/Kg)の方が28%の減少があった。また心電図も同じでペクチンを飲んだ後に改善したというものでした。

今回は、間違いがないように、コクランのData extraction formを参照してRCTの質も含めて検討します、

たった1つのRCTかつ二重目隠し法という最も厳密な形式の論文(Nesterenko VB et al.SwissMed Wkly2004; 134: 24-27)を紹介します。チェルノブイリ周辺でも特に汚染が強かったゴメリ州の子どもたち64人が、サナトリウムに1カ月滞在した間にされた臨床試験です。このサナトリウムではクリーンな環境でクリーンな食物を食べます。

試験前のホールボディカウンターでの測定値は放射線量が平均約30Bq/Kgです。64人をランダムに2群に分け、3週間、ペクチン末5gを食べた32人と、プラセボの粉末を食べた32人を比較しています。食べる前の測定値と食べた後の測定値は全員一覧表として掲載されています。評価されたのはペクチン群28人、プラセボ群30人となっています。ペクチン群で4人12.5%、プラセボ群で2人6.25%の脱落がありましたが、その理由はきちんと書かれています。3家族(4人の子ども)が最後の測定までにサナトリウムを離れ、2人の子どもは理由不明の検査拒否でした。脱落者を含めたITT分析はされていません。

RCTと明記されており、方法は「ランダム化表に基づいて」との記載があります。二重目隠し法については、倫理委員が与えられた粉末がペクチンかプラセボかが、セシウム測定後にしかわからないように、粉末投与者とセシウム測定者から「目隠し」する、との方法が記載されています。相当質の高い二重目隠しRCTといえます。

結果は、投与前のセシウムはペクチン群30.1+/-0.7(SD?)、プラセボ群30.0+/-0.9で、投与後はそれぞれ11.3+/-0.6と、25.8+/-0.8でした。平均減少率は、ペクチン群で62.6%、プラセボ群で13.9%でした(P<0.01)。プラセボ群の減少はクリーンな環境とクリーンな食事によるものと思われます。しかし、プラセボ群では誰も20Bq/Kg未満にはなりませんでした。この論文からは、ペクチンはセシウム減少にとても有効だといえます。

以上、唯一のRCT&二重目隠し法による臨床試験を検討しましたが、次回は他の比較試験などを報告します。

はやし小児科 林