くすりのコラム 大豆サプリと腸内細菌(NEWS No.478 p08)

女性ホルモンに似た構造を持つイソフラボンが更年期症状を和らげるともてはやされています。様々な健康増進のための大豆サプリが売られています。ヒトは多種のタンパク質の1つとして大豆を摂取してきました。サプリで摂取することと豆腐、煮豆、納豆などの食事から摂取することには大きな違いがあります。新しく発売された栄養機能食品の作られ方や大豆イソフラボンの本当の効果を考えてみました。

大塚製薬は昨年4月に更年期症状を軽減するとして大豆由来の「エクオール」含有食品をクリニックや調剤薬局などで発売しました。ちょうどその頃から健康番組などで度々、腸内細菌が取り上げられ「エクオール」産生菌がたくさん腸にいる人は若々しくシワも少ないと放送されました。大豆を食べてエクオールを腸内で作ることができる人は、大豆をよく食べるアジアで約50%、欧米人で約30%と報告されています。腸内細菌叢バランスは乳幼児期に決定され大人になってエクオール産生菌を定着させることは難しく産生菌ではなくエクオール含有食品を売り出したという訳です。大塚のホームページにはエクオール産生のために働く腸内細菌のうち、世界で初めて食品に使用することが可能な乳酸菌を使いエクオール含有大豆食品を開発したことが書かれています。大豆由来の機能性成分エクオールが、エストロゲンによく似た働きをし、女性特有の変化を穏やかにすると紹介されています。

大豆イソフラボンの摂取量と閉経前後の女性における乳がんリスクとの関連:疫学研究のメタアナリシス(Association between soy isoflavone intake and breast cancer risk for pre- and post-menopausal women: a meta-analysis of epidemiological studies. PLoS One. 2014 Feb 20; 9(2): e89288. doi: 10.1371/ journal. pone. 0089288)ではイソフラボンが乳がんリスクを高めるまたは予防するといった35の研究結果が分析されています。結果は大豆イソフラボン摂取による乳がん予防効果はアジア人で見られたが欧米人ではその予防効果は認められませんでした。
エクオールを腸内で作れるのか調べるための「ソイチェック」という商品も販売されています。そのユーザーのうち20ー30代の若い世代では欧米人と同じ割合でしかエクオールを作れないことが報告されています。上記の疫学研究にエクオールの影響があるとすれば若い世代では大豆イソフラボンの乳がん予防効果は認められないかもしれません。

長い時間をかけて自分にあった食品を効果的に消化吸収するための腸内細菌と共存してきました。無理に細菌叢を変える必要があるのでしょうか?今回エクオール産生菌に注目して見てきましたが、他にもプロバイオティクスとして乳酸菌製品が沢山売られています。色々な販売戦略に乗せられて高額な健康食品に手を出す前に、抗生剤の乱用や最近の過剰衛生社会を見直す必要がありそうです。

薬剤師 小林