大量の医療・介護難民を生み出す大規模な病床削減を許さない(NEWS No.479 p03)

政府は6月15日、有識者が医療費適正化を議論する専門調査会を開き、2015年時点での望ましい病院病床数に関する報告書を発表した。病床が過剰になるとして41道府県に削減を求めており、 削減幅2割以上が27県、うち3割以上が9県としている。全国では134.7万床(13年)から約15万床を減らし119万床程度を目指すという。病床が過剰だと不必要な入院や長期療養が増えて医療費がかさみやすいので病床の地域格差を是正するという名目で大規模な医療合理化による医療費抑制を意図している。
報告書は、高齢者らが長期間入院する「療養病床」について3パターンを提示。人口に対して病床数が多い西日本を中心に大幅削減を求められる。今後、高齢者が急増する都市部の神奈川や東京、大阪など6都府県では増加が必要になる。入院先を減らす一方、患者30万人程度は介護施設や自宅などで在宅医療を受けられるように対応を強化するという。
推計結果は都道府県が策定する「地域医療構想」に反映させる。医療機関は民間経営が主体で、削減方針に強制力はないが、25年に向けて補助金や診療報酬で病床再編を誘導し、介護サービスとの連携も進めるとする。
病床の機能を、救命救急や集中治療に対応する「高度急性期」、次いで緊急性の高い「急性期」、リハビリや在宅復帰に向けた「回復期」、現在の療養病床に相当する「慢性期」に分類。25年に全国で必要になる病床数は、高度急性期13万床、急性期40.1万床、回復期37.5万床、慢性期28.5万床とした。
7月10日には、厚労省の療養病床の在り方に関する検討会で、医療療養病床について、25年の慢性期の必要病床数を推計し、40都道府県で減床、山口、高知、佐賀、鹿児島の4県にいたっては現在の半数未満とした。

厚労省の想定通りに病床削減を進めさせてはならない。民間病院に対しては削減を強制できず、政策的に誘導するのが限界でだが、今回は介護型だけでなく医療型も削減するため、医療・介護難民の増大は必至だ。「医療費削減ありき」であり、医療合理化の具体的な策定を許さず、必要な医療供給について国や自治体に責任をもたせるよう要求していく必要がある。

いわくら病院 梅田