浮雲保健師ぶ~やんの呟き 「大丈夫じゃない!(怒)」~の巻(NEWS No.481 p06)

ある日のカフェ
入口のレジで注文し、支払いを済ませてセルフでコップに水を入れて着席する。
直後、今大流行の抱っこ紐に乳児を収めた2組の母子が入店。先に私の隣のテーブルに荷物を置きながら、店員にベビーチェア2脚を要求し設置してもらい 2人共ママはカバンの中から流行りの可愛い柄で『赤ちゃんのチェアベルト』(様々な大きさの椅子に赤ちゃんを固定できる補助ベルト)を取り出し、店のベビーチェアに装着。抱っこ紐に収まっていた子どもたちは、空中移動で再び『チェアベルト』にすっぽり収まる。
A「車 大丈夫?」(店先の路上駐車か?)
B「たぶん大丈夫」
A「アレ?財布が…あ!有った」
B「えぇ~大丈夫ぅ~?」
と意味の解りにくい会話をしながら レジへ。ナント2人一緒に行ってしまった。テーブルからレジまで軽く10㍍は離れている。私は隣で聞いていて 当然ママ同士で交代して注文に行くものと思い込んでいたので驚いた。乳児2人は見た目での月齢的に まだ歩いていないだろうが、いつベルトから乗り出すかわからない。
案の定 Aベビーがママのカバンに手を突っ込み始めたので、私は、つい慌てて立ち上がって歩み寄ってしまった。
目の前で起きていることに唖然としている私の横で 袋から白いものを掴んでムシャムシャし始めたAベビー。すかさず身体を乗り出しBベビーが奪い取る。白いものは食パンだ。「ふたりとも食パン食べているけど…」と私が叫んでも、ママ達は、レジからテーブルに戻ること無く
A「Bちゃんパン食べれる?」
B「食べたこと無いけど、全然、大丈夫」
たまたま隣り合わせた見知らぬママ達の「大丈夫」の連発にも呆れてしまった。
チェアベルトで簡単には抜けない構造に装着されているとはいえ、いつすり抜けるか、いつ椅子が倒れるか予想できない。
そして、もしBベビーに食物アレルギーが有ったらと考えると怖い状況。
決して 大丈夫じゃない。

以前から「大丈夫です」言葉が気になっていた。所謂『若者言葉』の一つで使い方が変わってきていているのだ。
本来の“大丈夫“は「安全」「安心」「しっかりしている」「確か」などの意味。
しかし最近の若者言葉としての使い方は、「要・不要」「可否」「承諾・非承諾」…など相手にお伺いをたてる問いかけや、拒否の返答をするときに、頻繁に使われるようになった。
よく遭遇するのが、街中で「ちょっと今 時間いいかな?」とキャッチセールスなどに声をかけられている若い人が「あ?大丈夫です」と逃げていく場面や、駅などの階段や電車の乗降時に赤ちゃんを乗せたバギーが重そうだったので、手伝ってあげようと声をかけた人に対して「大丈夫です」と 手伝ってもらうことを断る時に使われる。
『結構です』の使い方に似ているかもしれないが それよりも用途が広く、益々 意味が転化し曖昧になってきている。
「大丈夫ですか?」と言われる年配者の方が「全然、大丈夫です」の返答に慣れていくと理解できるようになり違和感がなくなるのかもしれない。

テレビのあるニュース番組で
街頭インタビュー。
「安全保障関連法案の内容について知っていますか?」
と、駅前の歩行者に声をかけていた。
声をかけられた人は
「え~。大丈夫ですぅ~」
と通り過ぎていった。

川崎恵子