原発事故後に急性心疾患が増加している(NEWS No.482 p03)

放射性セシウムは筋肉と結合しやすく、心筋を障害し、チェルノブイル事故の後も急性の心疾患が増加した報告がある。

以前に政府の死因統計で「急性心筋梗塞」、「虚血性心疾患」、「不整脈・伝導障害」、「心不全」、「突然死」に急性の心疾患が含まれていると考え、分析した結果、福島、宮城、茨城、岩手で2011年に有意な増加があったことを報告した。
今回、9月3日に2014年の統計が公表されたので、再検討を加え報告する。

その際、群馬県では「その他の心疾患」の計上が心疾患関係の20%を占める(他県は2%程度)ことが判明したため、その中に虚血性心疾患がかなり入り込んでいると考えられたので、「その他の心疾患」も分析対象に加え、各県とも6死因を分析対象とした。

同一の都道府県毎の傾向であるため、単純に死亡数の動向でトレンド解析を行った。

図1は全国の6死因での合計死亡数を実線で示したものである。
2001年~2010年までの経過を直線化(回帰直線)し、その延長線を太い一点鎖線で表示した。
その上下の細い一点鎖線は95%信頼区間を表示しており、2010までの傾向を持続している場合は95%の確率でこの間に収まることを示している。

図1

2014年は95%信頼区間の下限を下回っているため増加から減少ないし横ばいに転じている可能性を示唆しているが、2011年、2012年まではほぼ直線的に増加している。

これに対して、図2福島県、図3茨城県、図4宮城県では2011年(○印で表示)が95%上限のラインを大きく上回って増加している。

このような現象のみられるのは3県以外では新潟県のみでその程度も顕著ではない。

岩手県では、2011年が上限ライン上である。

図2

図3

図4

図5

岩手県では、2011年が上限ライン上である。
津波の被害の大きかった岩手県よりも3県での増加が大きく、震災ストレスよりも放射性物質の影響が考えられた。

保健センター 森