福島県甲状腺がん 2巡目の年間発見率(NEWS No.482 p05)

8月31日に、6月30日現在の福島県「県民健康調査」結果を発表しました。
いわゆる「先行検査」(以下「先行」)はほとんど終了し、「先行」で112人、「本格検査」(以下「本格」)と合わせて137人のがんが発見され、104人が手術を受けています。

今回は、2巡目の「本格」を見てゆきます。
「本格」では「先行」の2011年度と12年度両地域を同時に検査していますが、それらを分けて考えます。(表)(2次検査が進んでいない2015年度は省略)

本格検査結果2014年度検査
2011年度地域2012年度地域
対象者49,454166,758
1次検査実施者31,285117,780
2次検査対象者305868
2次検査実施者242510
2次検査確定者229430
がん1312
発見率0.0004155350.000101885
対10万41.5534601210.18848701
対10万年間発見率16.62138416.79232467
検査確定率で推定
発見率0.0005534410.000205665
対10万55.3441281120.56652727
対10万年間発見率22.137651313.7110182
1巡目から2.5年後として計算1巡目から2.5年後として計算
先行検査結果20112012
対象者47,768161,135
1次検診受診者41,810139,339
2次検診対象者221988
2次検診確定者197899
がん1456
発見率0.0003756420.000441685
対10万37.5641802444.1684939
対10万年間発見率37.5641802422.08424695
事故から1年後事故から2年後

現在発見されたがんの1次検査受診者に対する比率は10万当り、2011年度と2012年度地域でそれぞれ41と10になっていました。
しかし、「本格」では2次検査に回っているのにまだ結果が確定していない人が2011年度地域で76人、2012年度地域で438人が残っています。
彼らからこれまでと同じ比率でがんが発見されるとすると、2011年度地域では10万人当り55.3、2012度地域は20.6になります。

全国統計の罹患率と比較するために、これらの値を年間発見率にします。

表の2011年度地域は「先行」から平均2.5年、2012年度地域は1.5年後に「本格」が実施されていたので、年間発見率では、それぞれ55.3/2.5=22.1人と20.6/1.5=13.7人になります。

全国平均の年間発生率は、「本格」の対象年齢より高い0-24歳でも、2001-10年の10年間平均で10万人当り0.63です。
「本格」の発見率は、その2011年度地域で35倍、2012年度地域で21.6倍でした。

「先行」での年間発見率は、2011年度地域で10万当り37.6、2012年度地域で22.1であり、それらより「本格」での発見率は減少傾向でした。

この傾向は、甲状腺がん、肺がんや大腸がんでの繰り返すスクリーニングの報告でも同様に見られますが、多くの調査で3巡目でも相当数の発見がなされています。
なお、2巡目の発見は1巡目で見逃されたがんの発見を含む可能性はありますが、見逃しは2巡目でも同様に生じますので、あったとしてもわずかと思われます。
そのため、繰り返すスクリーニングで高い発見率を示すことは、年々がんが発生ないし大きくなっていることを示しています。

今回の「本格検査」の結果は、福島では今後も全国平均よりはるかに多くのがんが発生・大きくなり、発見され続けることをより明確にしたと考えられます。

はやし小児科 林