福島県甲状腺がん 2巡目「本格検査」の意味(NEWS No.483 p04)

前号では、福島県民調査結果(8月発表)の1巡目の「先行検査」と2巡目の「本格検査」の対10万人当たりの甲状腺がん「発見率」について報告しました。
今回は、2巡目でも極めて多数のがんが発見された意味について、もう少し考えてみたいと思います。

図1

まず、図1は、被曝で生じたがんが大きくなり直径5ミリ以上なら検診ではがんとされます(矢印②)。
「先行検査」では直径40ミリを超えるがんも見つかっているのですから一部はその前に症状が現れている可能性が大です。それが矢印①です。
①+②が「先行」で数えられているがん患者です。この中で、①以外のがんは症状もないのに「スクリーニング」によって将来症状を現してくるかまたは消滅するがんを早く発見されたという説は、被爆時にすでに相当な大きさのがんになっており、それらが検診で早く見つかったに過ぎないというのが「スクリーニング効果説」です。
確かに矢印⑥のよう被曝前から、大きくなっていたがんが発見された可能性はあります。

他方で、2巡目の「本格検査」では、「先行検査」で2次検査に回されなかった直径5ミリ以下のがんがその後も大きくなり続けて5ミリ以上になれば、がんとされます③。
2巡目で5ミリ未満でも、その後大きくなると次の検診で見つかります④。
さらにゆっくり大きくなったり⑤、そのまま消滅してしまう場合もあるかも知れません。

図2

別の説明をしますと、図2のように、一巡目の検診で5ミリ以上のがん患者は2巡目の検診では対象から外れますので、ここで発見されたがんは1)1巡目から大きくなったもの(もしかしたらその後発生下ものも含むかも知れません)です。

2巡目で発見されたがんは、1-3年前には5ミリ未満だったものであり、それらが大きくなっていること、したがって近い将来それらのほとんどは症状を現す、ということになります。これで、「スクリーニング効果説」では「もともとあったがん」の中の、5ミリ以上のもともとあったがん、については説明できなくなります。

スクリーニングにつきものの見落とし(検査の感受性)では2巡目の発見率の高さを説明できません。
例え、1巡目でがんの10%を見落としていたとしても、2巡目3巡目でもほぼ同様の見落としがあるはずです。
発見率があまり違わなければ、1巡目の見落としとほぼ同数のがんが2巡目でも見落とされます。

次の3巡目の検査でも、2巡目と同様のことが言えます。

福島県の2巡目の「本格検査」でも前回お示ししたように、高い「発見率」だったことは、今後の検診でもがんの高い発見率は続き、多くのお子さんが検査や手術などを受けなければならなくなることを示しています。

はやし小児科 林