くすりのコラム 定期予防接種と適正価格(NEWS No.483 p08)

医療に対し「なんでこんなに高いねん!」と言える社会は健全です。
薬局にくる患者さんの多くは管理料、調剤料のことや同じ数の薬であっても服用方法が変わればお薬代もかわることなど、あまり関心がありません。
薬代に興味をもった患者さんに調剤明細書を解説すると「管理なんかされたないなあ。いらんで!」と笑いながら言われ困ったことがあります。薬剤服用歴管理指導料拒否は薬局では難しい問題なのです。

先月の臨床懇話会でワクチン同時接種の安全性について話題がありました。
また知人からは定期予防接種の接種料について住民訴訟が起こされていることを教えてもらいました。
その住民監査請求監査結果報告書を読み、一般市民の声が反映されにくい医療制度に対し市民が声をあげていることに胸が高鳴りました。
予防接種費用は地方自治体と医師会との委託契約により決められています。
ワクチン薬代・手技料・初診料などを参考に単独接種を想定した接種費用が決められています。
ここで問題になっているのは近年、同時接種が可能となり、1日で数種類の接種を行った場合、単独接種を想定した代金をそれぞれ足し合わせた額を請求することになりました。
つまり通常診療では算定できない同じ日に初診料などを複数回算定するような形になったのです。
当然行政は同時接種時の接種料を医師会側に安く設定し直す必要があったのです。
また数千円もする予防接種見合わせ料についても市民感覚からみるとキャンセル料としては高いと知人から言われました。
医療関係者である私は冒頭のような経験からこの意見を前に賛同も否定もできませんでした。
このようなやり取りから患者サイドで医薬品の安全性を考えているつもりの自分が金銭面では医療者側の人間として確かに存在していることを実感しました。

血圧が下がったのに薬やめさせてくれないと嘆く友人がいます。
なにも他に病気もないのに「生活習慣病管理料」のため降圧薬を1/4に割って服用させられています。
訴訟は公費負担の予防接種にまつわる税金の使われ方に対して行われたものですが、保険点数の決定に市民の声が届けば薬漬け医療がもっと改善できるかもしれません。
何より市民参加による監視は薬の安全性を高める可能性があります。
「医薬品の安全性と法・薬事法学のすすめ」には医薬品監視に関する「予防原則」「透明性の確保」「市民参加」「法による規制」といった4つの基本原則があげられています。
本には薬害の歴史は専門家に委ねるだけでは薬害を防止できないことや、専門家による評価や判断には経済的な利益相反だけでなく名誉欲、地位や立場の維持、自説の正当化したいという心情がバイアスとなることが書かれています。
医薬品の有効性の評価、医療安全の評価、医薬品や診療報酬などの保険点数の決定は専門性が高くわかりにくく、医療関係者の主導のもと行われています。
公平な医療評価、規制、点数の決定には「市民参加」が必要なのです。
一方で、一般市民である患者団体を企業が取り込み受診奨励や新たな病気作りに利用しようとする動きもあります。
より良い医療を実現するには医療安全の話だけではなく医療にまつわる保険点数(お金)の正確な情報提供も医療者としては重要な仕事です。

薬剤師 小林