「第4回低線量被曝と健康被害を考える集い」の報告(NEWS No.484 p01)

11月5日に被爆地長崎市で開催されました。
2012年から毎年日本公衆衛生学会開催中の自由集会プログラムとして開かれており、今年で4回目です。
代表世話人は津田敏秀教授(岡山大学大学院環境生命科学研究科)。

「もはや甲状腺がんの多発は揺るがない事実である」
「福島原発事故後の広範な健康被害が増加しはじめている」ことが確認されました。
津田敏秀氏から「放射線の人体影響と原発事故による甲状腺がん-因果論争から説得・対策へ-」と題して報告されました。

この中で、福島での甲状腺がん多発を証明した津田氏らの論文が世界的な疫学雑誌に掲載されたことの意義と内容を確認しました(概要は10月号1面で報告すみ)。

また、講演を通じて、
「もはや甲状腺がんの多発は揺るがない事実である」
「甲状腺がんの多発に関しては、100mSv閾値論と同様に、もう論争の余地はなくなった」
という事実を豊富な科学的根拠を基に確認出来たことです。
そして、「誤った風説を修正し、まだ納得していない行政の皆さんを説得する段階である。」という内容を広範に示していただき、参加者が確認できたことです。

次に、医問研の林敬次氏が、福島原発事故後の広範な健康被害の増加を報告し確認しました。
チェルノブイリ原発事故で生じた甲状腺がん以外の障害に関して報告されました。

  1. 甲状腺がん以外のがんとして白血病や乳がん、膀胱がんの増加。
  2. 妊娠出産に関連して、流産、死産、周産期死亡、乳児死亡、低出生児、男女比の変化、不妊、形態異常・・。
  3. 循環器障害、免疫、血液の異常・・。

福島原発事故による障害として、実際に多様な健康障害が生じています。
福島でも、広範な健康被害が生じていることの一端が、津田氏が双葉町の依頼を受けて実施したアンケート調査で明らかになっています。
死産率や乳児死亡率、周産期死亡率の疫学分析で増加が明らかになってきています。
また、急性心疾患での死亡の増加も考えられています。
そして、このことが今後の大きな課題となってきています。

結論として、

  1. 医学会はこれら以外の障害も含めて、リスクをできるだけ正確に伝えることが求められる。
  2. 半強制の帰還ではなく、それらの情報を基に福島から離れるかどうかを自身で決められるように、住宅確保を含めて経済的、社会的に援助するシステムを構築すべき。
  3. また、疫学調査などだけでなく、個人の健康手帳など、障害を明白にするための、準備も公衆に対し呼びかけるべき。

なお、当日報告された内容の詳細は、本年8月発行のブックレットをご覧ください。