くすりのコラム アレルギー性鼻炎への抗ロイコトリエン剤(NEWS No.484 p08)

アレルギー性鼻炎に対して、抗ロイコトリエン剤オノン(prunkulast)が大人だけでなく子どもにも使われています。
また、キプレスやシングレア(montelukast)も大人では使われており、いずれ、子どもでも使われるかもしれません。今回は、アレルギー性鼻炎に対する抗ロイコトリエン薬の効果を調べることにしました。

1.コクランレビューはありませんでした。
2.RCTの結果

まず、コクランライブラリーとPubMedでRCTないし比較試験の検索しました。
抗ロイコトリエン薬とプラセボの比較についてたくさんのRCTが報告され、効果があることが示されています。
ところが、ステロイド点鼻薬との比較では、ステロイドの方が効果があるとの論文が2編(同じ著者による)見つかっただけでした。(1)(2)
また、抗ヒスタミン薬との比較を目的とした試験も少なく、効果は同じとの論文が2編(3) (4)、ロラタジンの方が良かったとの結果が1編(5)ありました。
その他、いろいろな組み合わせの2剤と1剤の比較や、2剤同士の比較試験などがありますが、抗ロイコトリエン薬が優れているとの結果はさほどありませんでした。
レビューとまでは言えませんが、ざっと見てゆくだけで、抗ロイコトリエン薬の位置がわかりました。(これ以外の文献をお知りの方は教えてください。)

3.欧米のガイドライン

1)イギリス(6)
a. 経口・点鼻抗ヒスタミン薬 軽―中等度間欠的と軽症持続性に対して第一選択。
b.ステロイド点鼻 中等―重症、持続性に第一選択、抗ヒスタミン薬でだめな場合にも使用。
c.抗ロイコトリエン薬の位置、喘息と持続性アレルギー性鼻炎を持つ患者には有用であり得る(may be useful)
2)アメリカ(7)
第一選択薬として、1,ステロイド点鼻薬、2,抗ヒスタミン薬として、
抗ロイコトリエン薬に関して、臨床家はアレルギー性鼻炎の第一選択薬として使うべきでないとしています。理由は、抗ロイコトリエン薬は第一選択薬より効果が少ないというエビデンスと、コストのことも考えた、としています。

4.日本の薬価比較(大人)

そこで、コストを調べました。

抗ロイコトリエン薬はキプレス・シングレアで1錠222円(1錠/日)、28日で6216円、オノンは1錠58.8円2錠/日、28日で3292.8円(ジェネリックで1887.2円)
抗ヒスタミン薬で眠気の少ないロラタジンで1錠53.4円(1錠/日)、28日で1495.2円、ステロイド点鼻薬で28日分で1008.7円でした。

5.結論

効果が、ステロイド点鼻薬より劣り、抗ヒスタミン剤より良くはない抗ロイコトリエン剤を、最も高い薬価で認可するのは間違いです。安くするか、喘息と合併している場合とか、他の第一選択薬が使えない時とかに限定すべきです。
さらに、オノンについては、喘息と同様に、アレルギー性鼻炎適応認可用のデータでは「全般改善度」という非科学的なアウトカムで評価されて認可されており、アレルギー性鼻炎にも喘息にも、その効果は信用できませんが、そのことは機会があればご紹介します。

はやし小児科 林

(1) Pullterits T et al. J Allergy Clin Immunol 2002; 109: 949-955
(2) PULLERITS T et al. AM J RESPIR CRIT CARE MED 1999; 159: 1814–1818)
(3) Philip G et al. Allergy Asthma Proc.2007: 28: 296-304
(4) Chen ST et al. Pediatr Allergy Immunol.200; 17: 49-546
(5) DayJH et al. Allergy Asthma Proc 2008; 29: 304-3-12
(6) The British Society for allergy and Clinical Immunology. (guideline.co.uk)、
(7) American academy of otolaryngology head and neck surgery foundation