医療トピックス 抗インフルエンザ薬は推奨しないとの日本小児科学会見解をより広く知らせる必要性(NEWS No.485 p06)

ワクチンの変更は何のため?

今年度はインフルエンザ患者がほとんど来られません(1/16現在)。
昨年の年始の休日診療所などにインフルエンザ患者が押し寄せた状況とは打って変わっています。
ワクチンの影響だと言う人がいるかも知れませんが、今年度のワクチンの昨年から変わったのは、3価から4価に変わったことです。
インフルエンザB 型がこれまでの1価(種類)から2価に増えただけです。
A型に関しては2価のうち1価の種類が変更、B型も1価が変更されています。
しかし、これらの変更はこれまでもされてきたものであり、大きく変わったのはB型が1価増えただけですから、初期に流行するA型とは関係ないわけです。
現在のインフルエンザワクチンは、発熱を基本とした症状での評価では、効果が証明されているRCTはほとんどありません。
したがって、B型の種類を増やしても効果はありませんが、大きく変化したことがあります。
それは、医療機関への納入価格が平均約1800円程度から2700円程度に値上げされたことです。
4価になったことは、価格の下がっているインフルエンザワクチンを値上げするためには役立っただけと思われます。

インフルエンザの診断はのどの所見だけで可能?

日経メディカル2015年12月号にはおもしろい記事が載っています。
「早期診断、咽頭濾胞が決め手」として、インフルエンザ咽頭濾胞(咽頭後壁の丸く半球状の濾胞、境界明瞭でそれぞれが独立、マゼンタ色で、イクラに似ている、表面は緊満して光沢があり、半透明)の陽性者86人中(348人中)86人全員がインフルエンザで検査陽性(特異度100%)、同陰性者262人中261人が検査陰性(感受性98.8%)だったと、検査会社も真っ青の結果を茨城県桜川市の宮本昭彦氏が発表しています。
ひどく良すぎる結果ですが、ぜひ皆さんも検討してみてください。
(日大医学雑誌2013:72:11-8)しかし、この記事の後半では迅速キットと富士フイルムの「高感度検査」の両方を薦めるという矛盾した内容です。

抗インフルエンザの効果は限定的との認識が広がっている

抗インフルエンザ薬では、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタを紹介、イナビルを持ち上げ、子どもでの使い方も教えています。

しかし、ここで「高リスク者以外は不要か」と題して、「もっとも、インフルエンザは基本的には自然に治る疾患。
」「発熱期間が短縮することは示されているが、重症化を防げるかどうかの結論は出ていない」と国際感染症センターの忽那賢志氏が発言しています。
これは、大きな変化です。
(後半の発言は、重症化を防げないとのコクランレビューがあるのに、それをごまかしていますが。)
同時に氏は、下痢や嘔吐の副作用も挙げて、10数時間の発熱の短縮を希望するかは、副作用を認識して上で決めないといけない、としています。

この辺は、コクランレビューの結果や、日本小児科学会の見解が影響しているようです。

また、別の医者は「要りますか、要りませんか」と聞いているがほとんどの人は希望するので処方する、としています。
これは医問研のメンバーの経験と逆です。
その医師は要る方に誘導している可能性が大です。
日本小児科学会が、軽症には推奨しないと、明白にしていることには、全く触れていません。
今後ともマスコミなどの協力を得て、この事実を広く知らせなければならないと思います。

はやし小児科 林

こちらもご参照ください。
日本小児科学会が「季節性・軽症インフルエンザには抗インフルエンザ薬を推奨しない(2014年12月)」と明言! 私たちの要望への日本小児科学会の回答より 2015年7月回答書も追加