第4回 低線量被ばくを考えるセミナーに参加して(NEWS No.488 p04)

4月2日に、大阪小児科学会地域医療委員会主催のセミナーで井戸謙一弁護士が講師を務める「司法から福島原発事故・低線量被ばくを考える」の講演を聞いて来ました。

井戸弁護士は、金沢地裁で裁判官として、北陸電力滋賀原発第2号機の運転差止め訴訟で請求認容判決を言い渡しましました。その後、弁護士として「子ども脱被曝裁判」で福島地裁へ、函館市の大間原発差止め訴訟で東京地裁へ、最近では、2月18日に京都地裁で福島原発事故による自主避難者への初の賠償命令(東電に3000万円の支払いを命じる)判決を勝ち取りました。

低線量被ばくについての講演は、医師や科学者からのお話しが十八番ですが、弁護士という立場から低線量被ばくについてのお話しをお聞きするのは初めてでした。司法の目から見た的確な言葉はとてもわかりやすかったです。

「年間1mSv以上の被曝をする恐れがある人は、訴える権利があると、これまでそう学んでいた。それなのに20mSvに跳ね上がった。ここまで醜いとは思わなかった。こういう事を恥じずに言える官僚は劣化している。」法律を改正せずに、被ばく限度を20倍に引き上げるのは違法行為であると言われているのです。

福島県民健康調査の中間とりまとめでも、甲状腺がんの多発は認めたものの、放射能との因果関係は認めようとしていません。そればかりか、福島第一原発事故の被害を最小限に抑える為に、原発事故の住民対策のモデルケースとして国際原子力推進グループは「福島」を利用しようとしています。

「調べない」「声をあげさせない」「情報を隠ぺいする」、許されないことです。
過去の公害事件で繰り返されてきたことと同じで、声を上げないと被害はなかったことにされてしまうのです。
自主避難者の方々も同様なことを言われています。「私たちはいなかったことにされてしまう。」と。

医師、弁護士、科学者、市民で手を取り合って間違いを正さない限り、この国は歪んだまま進んで行くでしょう。私たち市民にできることは、真実を知り、それを周りに伝えていくことが大切だと思います。

斉藤さちこ