不要な薬剤費を人件費に!(NEWS No.489 p01)

日本の全医療費は約40兆円(2014年)とされています。そのうち、約10兆円が薬剤費に費やされています。これらの額の意味は諸外国との比較で相当わかります。

経済的に大きな力をもつOECD(経済開発協力機構)加盟国の中で、日本の人口一人当たりの薬剤費は第2位です(2013年)。それと比べ「全医療費」は大きく下がり14位。これからでも、薬剤費以外の医療費が圧迫されていることがわかります。中でも、人口一人当たりの医師数は実に32位です。看護師数は13位ですが、欧米と違い多数の職種の仕事を担う看護師の仕事量は膨大です。それらが、医師や看護師に過酷な労働を強いている基本的原因です。
さらに、「全医療費」は安倍内閣の政策下で圧縮され、2014年集計では伸びが止まることが予測されています。

逆に、薬剤費の率は今後も増加することが予測されます。というのも、2000年から14年までに増加した医療費の中で、例えば入院外医療費増加の3分の2は薬剤費の増加のためと試算されています(全国保団連調べ)。
この数年高血圧の薬や「脂質異常」の薬に対する、浜六郎氏らの批判が浸透し、マスコミも取り上げるようになり、また「大型ブランド」の後発品への切り替えもあり、これらの売り上げが減ってきました。例えば、ディオバン問題などでミソをつけた降圧剤ARBの総量は2011年の5,300億円ほどが2014年には4,600億に、「脂質代謝異常」のスタチン製剤も2011年の2,600億ほどから2014年の1,700億ほどに低下しています(以上、出荷ベース)。

それでも、薬剤費全体はほとんど減少しません。中でも、大きく増加しているのが、抗がん剤です。2008年には4,700億ほどでしたが、2014年には9,670億、中でも「分子標的薬」と称されるものは2010年の2,400億から14年の4,200億ほどに倍増しています。
がんに関しては、高血圧などよりも医師の薦めに対し、患者が冷静に薬を判断することはできません。「命がかかっている」と薬価がつり上げられても反論しにくいのかも知れません。全体的な延命が統計的有意でないわずか6週間で、QOLの改善もないアバスチンが年間1,000億円を超える勢いです。さらにオプジーボは、3ヶ月の延命を売り物にして、一人年間3,000万円以上、財務省が年間1兆7,500億と試算するほどの異常な薬価が承認されています。

医師は、無用な薬を使うことで、自分自身と病院全体の従業員がますますがむしゃらに働かなければならなくなるようにしていることに気づかなければなりません。

来る選挙では、先のオプジーボを、この種の抗がん剤で世界に先駆け破格の高額で承認するなど、製薬企業の利益を最優先する安倍内閣の政策に反対する勢力への応援が必要です。

はやし小児科 林